恋愛Jigsaw Puzzle
「…………………とし、ちゃん?」
離れるハズの手は、今だに離れることなくつながっていた。
でもさっきと違うのは、あたしがにぎってるんじゃなくって、寿ちゃんがにぎってくれてるってこと。繋いだ手をじっとみていると、
「…なんか、今の言葉だと、これが最後のセリフみたいだよ」
見透かされてるみたいで、ドキっとした。
「だ、だって」
―――声が震える。
「さっき、はあたしがいるって言ったくせに、何一人でいなくなろうとしてんの」
「…だ、って」
「…がいなくちゃ、意味がないだろ。野球続けろって言った奴が、じゃあ後は頑張れなんてひどい話じゃないか。は、ぼくに付き合う義務があると思うけど」
「…」
「それに、言っただろ。甲子園連れてくって。それなのに、連れてく相手が見てくれなかったら、野球たのしくないだろ。―――……がいて、でしょ?」
「だ、だって…寿ちゃん、」
…あたしの事、信じられないって、。そう言ったときには、もう涙が出てた。そうしたら、寿ちゃんが笑う気配がして。そっと目じりをふれる、手。この優しい手が、大好きなんだ。
「ごめん。気が立ってて、に八つ当たりした」
家族に見放されたのは、の所為じゃないのにね。…なんか、全てに裏切られてるような気がして。…そしたら、までいなくなっちゃうような気がして、怖かった。初めて聞いた、本音。じっと見つめると、寿ちゃんが苦笑いしてて、かっこわるい話でしょ?全然頼りない奴なんだって、笑った。その言葉にふるふるとあたしは頭を振って否定する。こんな弱音を吐いてくれたことが凄くうれしくて、信頼されたって、ほんとの意味でわかった気がして、でも、ちゃんとした言葉がほしくって。
「…じゃ…あ、たし…寿ちゃんのそばにいてもいいの?」
ぎゅっと握られた手を見つめると、寿ちゃんが「うん」って頷く声。
「今までみたいに、仲良くしてくれるの?」
「…そう言ってるじゃん」
その言葉と、あたしに向けてくれた笑顔が凄くうれしくて、あたしは昔ケンカしたときのように、寿ちゃんに思いっきり抱きついた。「う、わ!」って寿ちゃんの驚いた声が聞こえたけれど、でもそんなの気にしてらんない。ぎゅうって寿ちゃんの服を空いてる手の方でにぎって、泣いた。……いつもはこんなスキンシップてれるくせに。それなのに、やっぱりこうゆうときの寿ちゃんは優しくて「ごめんね」って言ってくれる声が、すごく優しくて。
また一緒にいられることが、すごくすごく、嬉しくて。あたしはやっぱり数年前と同じようにわんわん泣いた。
「…………―――ありがとう、…」
寿ちゃんのその声は今までで一番優しい声だった。