私の好きな人は一個上の先輩で、かっこ良くて、先輩の周りにはいつも沢山の人だかりが出来てしまうほどの人気者。そんな先輩に恋をして、月日はめぐり、中学最後の冬。あの時感じた先輩のイメージは、ずいぶん変わった。
…先輩は、悪魔だ。



デビルな先輩

〜元旦と共に課せられた指令〜



「ん〜…!」

大晦日も終わり、新年。あけおめ〜なんて家族に挨拶して、今日来た『あけおめメール』に返事を返して(自分も同様のことを打った)さあ、じゃあちょこっとだけ勉強しようかなーと気合を入れた。夕方にはお兄ちゃんと一緒に初詣だ。この年になって兄妹で初詣って言うのも悲しいけれども、…まあそれだけ仲良しだと言う事だ。
ふう、と息を漏らして、社会(世界史)の参考書を手に取る。あと、一ヶ月弱で受験だ。勿論私が第一に受けるのは『立海大付属高校』中学も同じ立海なのだから楽勝と言えば楽勝だ。けれども、万が一…と言うこともあるから気が抜けない。まあ多分内申とか色々考えると落ちる可能性のほうが低いと、思いたいけれども。
入試でよく出るであろうと予測される問題をマーカーで線引いて、ふう。とため息。うん、順調順調。そう思ったときだった。

ピンポーン。

うちの家のインターホンが鳴った。顔を上げたは良いけれど、まあ多分おうちにいる誰かが出てくるだろうと予測して、私はまた勉強を再開。
そうすれば、階段を上がってくる音がして、もしかしておにいちゃんの友達?と考え…浮かんできた人物は先輩だ。もしかして!と淡い期待を込めて、参考書なんてほっぽって自室のドアを開け放つと。

「あ!」

やっぱりそこにいたのは考えてた先輩の事。突然ドアから出てくると言う危行だったにもかかわらず、先輩は知っていたようだ。素早い反射能力で私のところのドアから遠ざかると、あぶねえよ。と一蹴。けれどもそんな言葉ぜんっぜん効くわけもない!
新年から先輩に会えたことが凄く嬉しかったのだ。

「赤也先輩!あけましておめでとうございます!」

そう言ったら、あーおめでとうおめでとうと適当な返事。ちょ、なんか…温度差が…!でもそんなのに凹んでる場合じゃない。気にしない気にしないと自分に暗示をかけて、気にしないように「先輩っ、もしかして一緒に初詣とか??」なんて言いながらさりげなく腕を絡ませると、うざったそうに眉を潜められた。それでも振りほどこうとしないことが嬉しいので気づかない振りをする。

、初詣って」
「お兄ちゃんと行く予定だったんですけど!もし赤也先輩来るんならあたしと一緒に」

先輩の腕を掴んでないほうの手で自分を指差してアピールすると、「・・・」と三秒ほど先輩は沈黙して

「お前、受験生だろ?」
「そうですよ、だから願掛けに」
「願掛けぇ?そんなんじゃなくって実力で勝負しろよ」
「も、勿論最後は自分の力ですけど!でもこのまま言ったら多分合格だし」

何せ、先輩が勉強できる女は―――と昔私に言ったあの日から、ずっと成績は上位なわけで。そうそう落ちないはずだ。だから、今年は赤也先輩と初詣いけるよ!と笑うと、先輩がニヤリ、と意地の悪いあの笑みを浮かべた。
ちょっと……いや、すんごく嫌な予感がするのは、きっと気のせいじゃない。この笑みは、危険だ。思わず絡んでいた手を解くと、

「ほう、じゃあ首席合格してもらおうかなー」
「え、えーーーー!!?」
「それくらい、楽勝だろ?」

それくらい。なんてにっこりと笑顔。

「ちょ、ちょっと赤也先輩!」
「俺、彼女になるやつが首席とか、すげーと思うんだよなー」
「!!!」

そんな事言われたら、頑張るしかない。今回の指令はまるで、彼女にしてくれる前提の話のような気がしないでもない。
「ほ、ほんとに?」まじまじと先輩を見つめると、無言でにっこりと先輩は笑った。ちょ、その笑顔反則!私の好きなスマイル全開の先輩に返す言葉は決まってる。

「頑張りまっす!!!」
「おう。じゃあ頑張って勉強してろよ」

こうして、私の元旦は勉強に終わった。



初詣から帰ってきた先輩から「これいらねーからやるよ」と多分くじかなんかでハズレだったピーピー笛を貰った。
…なんか、先輩に担がれた気がするのは、気のせい…だよね?





― Fin





あとがき>>新年ネタ。やっぱり一本くらいは新年ネタあった方がいいかと思ったんです。頑張りました。あけおめ。
2009/01/01