部活後、帰り道


ペンと日誌と柔らかな微笑み

- - - そ れ は 何 気 な い 日 常 の 中 で - - -




カリカリカリ…そんな音がさっきから俺の耳に届く。聞こえた方を見れば真剣な顔をして俯いてる彼女。
今は部活も終わって彼女と二人っきりだった。
部室で二人きり…なんてなんか良いシチュエーションじゃん?なんて思ったけど…

「なぁ…まだ?」

痺れを切らしてポツリと言ってしまった一言。

そうすればずっと聞こえてた、カリカリカリって音がやんだ。
それからずっと伏せられてた彼女の顔が俺の方を向く。

大きな瞳と目が合って思わずドキッとした。
整った顔立ち。…少し見惚れた。でもそれは一瞬のことで…

「仕方ないでしょっ?」

その整った表情は次の瞬間見事に歪んだ。
この顔は…怒り混じり。

「だから岳人君は帰っても良いって言ったじゃんか」

少しふて腐れた彼女の顔。ブツブツと愚痴りながら、また顔は机に…正確には日誌に移る。
なんだかそれが悔しい。たかが部誌なんかにこいつを取られたみたいで。
そんなこと笑われるから絶対言わねぇけど。

「だってよ、一緒に帰りたいじゃん」

ポツリとこぼせばまたペンの音がやんだ。…ヤベ…今の言葉も笑われるかも…!
言ったあと後悔して恐る恐る彼女を見ればきょとんとした顔。

「…ひ、一人じゃあぶねぇだろ!最近変質者多いし」

何だか照れたから早口で捲し立てた。
ちょくにアイツの顔が見れなくて視線が泳ぐ。

「…岳人君…優しいね」

彼女の声が聞えてきたのはそれから数秒してから。見れば笑った顔。
ふわりと…それだけで癒されるような微笑み。彼女の表情の中で俺が一番大好きな顔が見えた。