俺はいつもを見てるよ。

だから、も俺を見て欲しいんだ。





Always...
-His feeling-





!!お弁当食べよっ」


チャイムが鳴って、俺はいつものようにの所に行き、声をかける。
は俺の声に気づいて、ふと顔を上げると、「うん」と頷いた。
それから机の上に置いてある、先ほどまで授業で使った教科書やらノートを机の中にしまいこむ。
全部入れ終わってから、ゆっくりと席を立つ。
そして、机の横にかけてある鞄を手に持った。


「うん、ほら不二も」

「うん」


それから、振り返って不二を呼ぶ。
その顔は、俺の気のせいかもしれないけれど、何となく、俺が話し掛けるよりも穏やかで。……ほんの少し、悲しくなったりもする。
いや、それよりも悔しいのかもしれない。
その悔しさが何でなのかすぐわかる。
不二に嫉妬してるってこと。

俺って嫌なヤツ。

心ん中で自分を叱って、と不二を見る。


「ほら!早く!」

「待って、英二」


わざと急かすように言うと、は右手を俺の前に出した。
ストップ。という意味だってことくらい俺にだってわかる。
でももし今、この手を掴んで不二から逃げるように走ったら、どんな顔をするだろう?

……答えは簡単。

きっと、怒る。いや、絶対、嫌われる。
わかりきった疑問を自問自答して、俺は一つ小さなため息をついた。










「結構気持ち良いね。もっと寒いかと思った」

「そだね!」


「んー」っと両手を広げて、深呼吸をするを見て、俺も同意する。
今日、俺たちは天気が良いと言うことで、屋上で食べる事になった。
は屋上の手すりに手をつけて空を見上げる。


「ほら、不二もおいでよ」

「食べないの?と英二」

「そんなの後だよ。早く」


一人、弁当の用意をしている不二に声をかける。
そして不二の腕を引っ張っては自分の隣へと移動させた。

……いつだってそうだ。
何かあると、必ずといって良いほど不二不二って。
俺の名前も呼んでよ……。なんて子供じみたこと思って。でも、口に出せない。
きっとそう言ったら「何言ってんの」と呆れた表情で見られるだけだろう。
……そんなの、辛いだけだから。
冗談っぽく振舞ってるけど、ほんとは悲しいから。
の言葉に泣きたくなることだって、ある。


「英二?」

「え!?」


の言葉に自分の思いが通じたのかと、思わず耳を疑った。だけど、実際はそうじゃなかったらしい。
どうやら俺は、ぼけーっとしていたらしく、それで俺の名前を呼んだらしかった。
不二もの後ろで俺を見ていた。


「何してるの?食べるよ」

「あ、うん!!」


俺は大きく頷いて、笑った。
振り返ると、二人はもう弁当を出していたので、俺も急いでかばんから弁当を出す。
そして、少し遅れながら、俺たちはご飯を食べ始めた。





「あ!この玉子焼き頂戴!!」

「え!?英二の作ったやつのほうが美味しいじゃん……嫌だよ」


不意にの弁当箱を見て、俺の好きな卵焼きを発見した。
俺は卵焼きを指指すと、は慌てて弁当箱を俺から遠ざける。


「お願い!ちょーだい!!」


俺は頼む!と手のひらを合わせると、は困った顔をして、英二のやつのほうが美味しいんだから。と呟きながら、俺の前に弁当箱を出した。
俺はにお礼を言うとそこから卵焼きを取ってぱくっと頬張る。
程よく入った砂糖の甘さがいい。
冷たくなってしまってるのが惜しいくらいだと、思った。


「おいしいにゃー!!!」

「ほ、本当……?」


俺はもぐもぐと口を動かしながら、に向かってピースをする。
そしたらは驚いたように目を大きくさせて、そして嬉しそう俺を見た。


「本当だよん!」


ぐっと親指を立てると、は俺の指と顔を交互に見て、そして笑った。


そう、この顔。
この、の笑顔が好き。
なかなか俺には笑いかけてくれないけど、だから、時々見せる笑顔が、とっても好きなんだ。
……この笑顔は俺に向けられてるって思うと、不二にも勝てそうな気がするんだ。





「ねえ、不二。今度の日曜、家に行っても良い?」

「うーん……日曜は午前練だから、午後からなら良いよ」

「えっ!何で!?」


しばらくして、はっと気づいたように、が口を開いた。
俺は身を乗り出して会話に入り込む。
すると、は「忘れたの?」と俺に言って言葉を続けた。


「ほら、来週から定期テストでしょ?」

「うん」


こくり、と頷く。


「私たち、いくら高校がエスカレーター式っていっても、やっぱり成績悪いと補習があるじゃない」


「だから、不二頭良いから、教えてもらおうと思って」とは頬を掻くと、不二を見やった。
の視線に気づいた不二は「うん、良いよ」と返す。


「ありがとう!不二」


不二の言葉を聞いて、満面の笑みを浮かべる
俺は何か嫌で、慌てて立ち上がって不二を見た。


「お、俺も行く!!!駄目??不二っ!!!」

「え?別に良いけど……」


別に、勉強したいわけじゃなかったけど、は不二と二人きりで勉強するなら、話は別。
嫌いな勉強でもなんでもやってやる。そんな勢いで不二の肩をがしっと掴んだ。
不二は驚いたような表情を浮かべながらも、縦に頷いてくれた。


「じゃあ……不二の家、で良いかな?」


確認を取るような物言いのに俺と不二は「うん」と頷くと、は手帳を取り出して、さらさらと予定を書き並べる。
そして、「あ」と小さく呟くと、手帳に向いていた目線を俺と不二に向けた。


「お世話になるんだし、部活差し入れ持ってくよ」

「ありがとう」


にこっと俺と不二はにいうと、は「ううん」と首を振って、また手帳に目を落とした。


「じゃあ、10時ごろテニスコートに行くね」



やっぱ、俺は、が好き。
例え、が俺のこと好きじゃなくても。
それでも、やっぱり俺は、が大好きだ。









―Next










あとがき

やっぱり、再UPしてみても、変。
ていうか、いっそのこと、タイトルはそのままで別の話にしちゃおうか……。









管理人:時枝 華南