テストもそろそろかなと迫った日曜日。
今日もカラリと晴れた良い天気。
私は窓を開け、ん〜と深呼吸をしてから台所へと向かった。
Always...
-Sunday before a test-
「行って来ますっ」
私は手提げ鞄を腕に掛けて、元気良く家を出た。
通いなれたその道は、休日のせいなのか人があまり通っていなかった。
「えっと、英二たちはもう学校で練習してる頃だな」
腕時計をチラっと見て、時刻を確認する。
「終わる時間、12時30分頃だから……」
きっとお腹が空いている頃だろう。
私は自分の手提げ鞄を見つめ、ふふっと笑みをこぼした。
そして、この前の休憩時間の出来事を思い返す。
「あ!この玉子焼き頂戴!!」
「おいし〜!!!」
喜んでくれた。
だから今回は英二の為に、玉子焼きを作ってきたのだ。
「実はアレ、私が作ったんだよね……」
嘘だったかもしれない。
お世辞で言ってくれたのかもしれない。
でも、嬉しかったから。あの笑顔をもう一度見たいから。
「また、食べてくれると良いけどな」
淡い期待を寄せ、学校の門をくぐり抜ける。
其処から一直線にテニスコートまで歩いた。
近づくにつれて、凄い掛け声とボールの音が私の耳に入ってくる。
そんなテニス部に、圧倒されながらも、ゆっくりとコートへと歩いていった。
そしてコート前のフェンスに着いた私は、無意識に英二の姿を探す。
辺りを見渡すように眺めると、英二を発見した。
フェンス越しで見る英二は、真剣そのものでトクトクと心臓が高鳴る。
すると、丁度試合が終わったらしかった。部長の手塚君が、休憩!と声を上げる。
その声が部員に伝わると、部員達はぞろぞろと散らばり出した。
英二も例外じゃない。大石君と肩を並べながら歩いている。
そんな姿を見ると、なんだか妬いてしまう。
男相手に何を……、と我ながら阿呆だと思うけれど。
きっと羨ましいんだろう。不二と英二が話しているときも思ったりする。
「あーー!!!!!」
「お早う、英二」
そんなことを考えていると、大声で名前を呼ばれた。(叫ばれた)
英二も私に気づいたのか、両手を上に上げてブンブンと振っている。。
それがとても好き。タッタッタと駆け寄ってくる彼がとても大好きなのだ。
「や〜っと休憩だよ〜」
「お疲れ」
へへっと笑う英二に自然と笑みがこぼれて。私も薄っすらと笑った。
そのとき「ん?」と英二は声を漏らす。
「何か匂いがする!!!」
「え?」
そして、言葉を続けるとくんくんとまるで犬のように嗅ぐ。
それからピクっと眉を吊り上げる。
「その鞄っ!!!」
次の瞬間。
英二は私の持ってる鞄を指差した。
「見せてっ?」
「え、いや……」
そして、首を傾げる。
思わず、声がどもってしまった。
すると、半ば無理やりにグイっと鞄の中を覗き込む英二。
「あ!本当に持ってきてくれたんだっ!!」
「う、うん……まあね」
瞳を大きく開き、私に問いかける。
私はまたどもりながら、英二の言葉に返した。
すると、英二がよりいっそう嬉しそうに顔を綻ばせる。
「これ、が作ったの!?」
「うん、まぁ…」
その言葉が恥ずかしくて、思わず顔を伏せる。
あ、あんまりまじまじと見ないでよ。
私はその言葉を飲み込んで、代わりに「あとで、不二と一緒に食べよう?」と素っ気無い声を出した。
「え……?」
「だって、不二もきっとお腹空いてると思うから……」
「あー……うんっ!!!」
その弁当を見つめていた英二だったけど、すぐに私の方を見て二カッと笑って言った。
「お早う、」
それから後ろから声がして、振り返る。
声で何となくわかっていたけど、やっぱりそこにいたのは不二だった。
「あ、不二、お早う」
「ん?何其れ?」
不思議そうに不二も弁当に目をやる。
私は口を開いて笑って言う。
「玉子焼きよ、お腹空いてるだろうと思って……。あとで三人で食べようね」
「うん、有難う…あ、英二?そろそろ休憩終わるよ」
「あ、うん!」
「じゃ、頑張ってね」
ニコっと笑う私に不二と英二も笑って「うん」と言って背を向ける。
「くしゅ……っ」
「あ、」
「え?」
くしゃみをした私に不二が駆け寄る。
「何?」と言うと、自分の着ていたジャージを私の肩に掛けた。
「寒そうだから。貸すよ」
「あ、有難う……でも、不二が寒いでしょ?」
「運動してるから、差ほど寒く無いよ」
そう言う不二の言葉に甘えて、私はまた「有難う」と微笑んでそのジャージを着る。
「じゃ、頑張ってね、不二、英二」
私は2人に手を振った。
二人とも笑って私に手を振り返す。
私は今から始まるであろう部活をフェンス越しに眺めた。
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管理人:時枝 華南