ガラッ
眠っていたは、そのドアを開く音で、うっすらと瞳を開けた。
素直な気持ち
*A pure feeling*
「あれ?先生居ないのか・・・。勝手に休んじゃって良いのかな?」
はカーテンのほうに目を向けると、向こう側にいる人物を見た。
その人物は、カーテン越しにだったが、先生を探しているらしく、辺りをきょろきょろとしている。
・・・見覚えのあるシルエットと聞き覚えのある声に、の頭にはある人の名前が思い浮かんだ。
そしてカーテン越しにいた人物は、小さな音を立ててカーテンを開ける。その音と同時に、今が思ったことは、見事一致した。
「・・・?」
「不二君・・・っ」
ただ、呆然とも不二も互いの顔を見る。
そして、確かめるように名前を口に出した。
「吃驚した、も具合悪いの?僕もなんだ」
先に次の言葉を出したのは、不二だった。にこりと微笑んで不二は、もう一つのベットへと入る。
は不二の行動を一つ一つ穴があくほど、見つめた。・・・いつの間にか、眠気など吹っ飛んでしまっていた。
「?」
「な、何・・っ?」
しばらくして、沈黙が続いたあと、不二はの名前を呼んだ。
は不二に背を向けて返事を返す。すると、一呼吸置いて、不二は「ごめんね」と呟くように言った。
「え・・・?」
「気まずくさせちゃって」
は、意外な一言に、言葉を詰まらせる。
不二がどんな表情をしているのかはわからなかったけれど、痛いほど、胸をつかれる一言だった。
「べ、別に、不二君のせいじゃないよ」
は咄嗟に寝返りを打つ。すると、不二が真剣な表情でを見ていた。
目が合う。は不二の真剣な瞳から、目が離せなかった。
「手塚と、仲良いんだね。知らなかった」
「そ、そうかな・・・・」
「うんだって手塚って、女の子とあんまり話さないからさ」
苦笑を浮かべて、不二は淡々と話す。
「何か、気に入らなかったな」
そして、小さく呟かれた言葉に、は顔を紅潮させた。
慌てて目線を逸らす。
ど、如何言う事なんだろう・・・?
ちらっとはまた不二を見る。不二は、真剣な顔をしていた。
テニスのときに見せる、あの表情をしていた。
すると・・・
「何てね、僕はもうを振っちゃったんだし、文句は言えないよね」
「え・・・・っ」
「、手塚のこと、どう思う?」
くすっと、いつもの笑顔に戻って、に言う。
そして「手塚」という名前に微かに反応する。
「そんな、どう思うって・・・私は・・・」
「ん?」
「え・・・何でも・・・っ」
言いかけては口を閉じてベットにもぐり込んだ。くすくすと不二の笑い声が聞こえる。
そんな中は、早く時間よ過ぎて!!と強く願うばかりだった。
ぎゅっと瞳を強く瞑って両手を交差させる。
「ねえ、?」
すると笑いがやんで、また不二君が声をかけてきた。
「何よ」とぶっきらぼうな声で返事を返すと、不二がふう、と息を吐く音が聞こえた。
「真面目な話で、あの告白って、まだ有効かな?」
「え・・・・?」
突然の不二の言葉。は驚いて、布団から顔を覗かせる。
そして不二の顔を食い入るように見つめた。
「じょ、冗談でしょ・・・!」
「冗談じゃないよ」
「・・・嘘・・・だって、友達だって・・・言ったじゃん・・・友達以上に見れないって・・・っ」
目を瞑って、涙を乱暴に拭う。それでも、涙はとまらない。
止め処なく溢れては、白い枕にぽたりと落ちた。
「友達だって、思ってたから・・・。でも、手塚と話してるところをみたら・・・」
不二は、続ける。
静かに、ゆっくりと、そしてはっきりと・・・言葉を紡ぐ。
「でも、今気づいたんだ。が好きなんだって。まだ有効なら、付き合おう?」
「で、でも・・・私・・・」
見つめられる視線から逃げるように寝ていた体を起こす。すると、丁度良いタイミングで予鈴がなった。
不二はベットから降りると、の方へ近づいて、軽く額にキスを落とした。
「覚えておいて、僕の気持ち」
そう言い残し、不二は保健室から出て行ってしまった。
はベットに座り込み、カーテンの奥に消えてゆく彼を、呆然と見つめていた。
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