立海大中学を卒業して、早5年。私達は20歳になった。
20歳って言ったらお酒が飲めて、タバコが吸えて…と色々楽しいことがある年だと思う。色々と節目っていうの?そういうの感じるよね。そんな中、一番の大行事って言ったら、やっぱり『成人式』だと私は思うのです。
七五三以来のオシャレといっても過言ではない、着物とは一味違う振袖と言うものを初めて着た私。
今日は、成人式だ。
さすがに着付けは予約がいっぱいだったらしいけど何とか予約が取れた私は、12時に着付けてもらい、式場に向かった。 母親に車で連れてってもらって、じゃあねと会場前でお別れした私は、緊張の面持ちで会場をくぐった。
卒業してから、私は立海の大学部へは進学せず、働いたため殆どのクラスメイトと会うのは2年ぶりなわけだ。 どんな風に変わってるのかな?とか、どう思われるかな?とか色々考えてしまう。メールでは結構話すものの、実際会えた人なんて片手で数えられるくらいだと思う。
私はふうと小さく息を吐き出して、一歩一歩足を進めた。 やっぱり予想はしてたけど、凄い人だ。私は折角綺麗にしてもらった振袖が着崩れないように慎重に人の群れを掻き分けて、歩く。
すると、見慣れた銀髪を見つけて、あ、と足を止めた。
「におう!」
言った名前は中学高校とおんなじクラブメイトだった友人の名前だ。名前を呼ぶと、あっちも気づいたのか、高校のときより伸びた後ろ髪を振って私のほうを振り返る。
「おお、」
そして紡がれるのは私の名前。ああ、やっぱり仁王だ。懐かしさがこみ上げてきて、嬉しくなって私の足は再び歩き出す。ただし、さっきみたいな小さな歩みではなく、駆け足だ。気が急って、仕方ない。仁王だ仁王だ!そう思うと嬉しくてたまらなかった。「にお!」言いながら仁王の腕に抱きつくと、くつくつと笑みが降ってきた。
「相変わらずやのう」
可笑しそうに笑う仁王の声はあのときと変わらない。どこかもわからない方言、落ち着いた声色。ああ、仁王だ。そう思うと凄く嬉しくて、ぎゅうっと仁王の腕を抱きしめた。すると、仁王の横にいた人物がひょこっと顔を覗かせたと思うと、私の名前を呼んだ。
「!」
呼ばれたほうを振り向けば、ブン太だ。ああ!と声をあげれば、ブン太が快活に笑った。あの頃よりも少し大人びた表情でくしゃっと子どものような笑み。久しぶり!と仁王の腕から離れてブン太に抱きつくとわわ!って言いながら抱きとめてくれるブン太。
「おま!着物が台無しになるだろい!」
「へへ、ごめん!嬉しくって!」
「二年ぶりだもんね?」
抱きついた腕を放して言えば、いつの間に来てたのか、精市の声が聞こえた。え?と顔を上げれば優しい笑み。「精市!」って今度はブン太から離れてぎゅうっと抱き合えば、ふふっと笑う声が耳に伝わった。
「変わらないね、は」
「みんなも!」
どうやら、みんなずっと傍にいたらしい。続々と現れる面々に抱きついたりしたら、何だか中学や高校に戻ったみたいだ。
見事男子テニス部メンバー集合なわけだ。 ……ただ、一人を除いて、だけど。
「これで、赤也もいたら全員揃ったのにね」
少し残念そうに言えば、みんながきょととしてそれから各々個別のリアクション。
「そうだね、がこんなに綺麗になったところ、赤也にも見せたかったね」
「悔しがるだろうぜ!」
「さんざんごねとったからなあ、自分も行くって」
「もしかしたら会えるかもしれませんね」
比呂士の一言で、皆が一瞬静かになった。そして、次に続くのは
「先輩に会いたくなってきちゃいました!」
とか言ってな。と見事ハモったのはそんな声。お互いに顔を見合わせて、ふふっと笑う。ありえる!と誰かが声を上げた。本当に懐かしい。冗談交じりで言った言葉だったけれど、本当に赤也に会えたらいいのにな、と思った。
すると、ぎゅうっと後ろから抱きしめられる。え、と思う間もなく、後ろから回ってきた手がぎゅうと私を放さない。
「先輩!久しぶりっす!」
「赤也!?」
「いや〜先輩に会いたくなって来ちゃいました!へへッ」
そうすれば、私達が今しがた予想したとおりの答え。思わず噴出してしまって、プっと笑うと、赤也が不思議そうな声を上げた。どうしたんすか?あれ?とか言う言葉に他の人たちも笑い出す。ワケのわかってないのは赤也だけだ。
なんスか!って声が聞こえる。でもそれは弦一郎の「何でもない」の一言で終わりを告げた。
「にしてもお前、成人式は来年じゃろ」
「そうだそうだ。挨拶とか聞けねえだろうが?」
「む!でも良いじゃないっすか!きたって!俺、先輩達が終わるの待ってますから!」
「寒くない?」
「大・丈・夫・でっす!そんなヤワじゃないっすって!でも、まあ式終わったら、どっか寄りましょ!久しぶりにね。先輩と久しぶりに話したいし!」
ふて腐れたように言いながら、最後はにかっと笑う後輩。
そんな彼を見て、ふふっと笑ったあと、親指を立てて。
「わかった!じゃあまた後でね!今日はモスでいっぱいみんなで昔話しよう!」
「お前、そのカッコでファーストフードとか入んのかよ」
「え。ダメ?」
「…ま、らしいわな」
「同感」
早く成人式、終わらないかなー。 まだ始まる20分も前だというのに、そんなことを思った。 今日は楽しい日になりそうだ!隣で楽しそうだなーと笑う仲間達を美弥って、小さくほくそ笑んだ。
HaPpY〜20
あとがき>>きっと彼らは20歳になっても仲良しなんだと思う。自分の成人祝いも兼ねてお祝い。
2007/01/03