2009.04.01

ハッピーエイプリルフール 不二周助

スーハー、スーハー。
何度目かの深呼吸の後、あたしは目の前の家を見上げた。平常心、平常心。大丈夫、練習もした。練習どおりにやれば、全然大丈夫なんだから!マイ携帯を見つめれば時刻は16時。うん、この時間なら家にいるはずだって、英二の情報だもの。
スーハー、スーハー。
もう一度深呼吸をして、あたしは目の前のインターホンを押した。
『はい?』
「っあ!あ、あああああの!あ、あたし…その、不二…じゃない!周助くんの同級生の」
?』
「そ、そうで――――え?…不二?」
『うん、ちょっと待ってて』
って!さっそく本人かよっ!ちょ、待ってよこ、心の準備が…!
そんなこと思っても不二は待っちゃくれない。数秒立った後、ガチャリと扉が開かれて、不二の顔が姿を現した。
「どうしたの?」
「う、あ、あのね。きょ、今日は不二に言いたいことがあって!」
「うん?」
言え!言うんだ!今日はエイプリルフール。嘘をついても良い日。決して今から言う言葉に偽りはないけれど、この関係を壊したくないから、この日に言うしかない。だって、もし、駄目だったら、『なんてうっそぴょーん!もしかして不二信じちゃった?』とかなんとか言ってこれからさきも友達としてやっていける、ハズだ。駄目な時のパターンはいくつも予想してその回答も不自然がないように練習を沢山重ねた。
い、いつでもフラれる準備は出来てるというものだ!
…悲しいけど、だって…上手く行きっこないもんね。…不二、理想が高いって言ってたし。じっと見つめると不二はいつものスマイルだ。
「まあ、立ち話もなんだし、入りなよ」
「あ、いや。ココで良いよ!すぐ済む話だし」
勧めてくれたことは本当にありがたかったが、なんていうか…バッドエンドのその後までのシミュレーションはしていないのでぼろがでたら困る。てゆうかあたし自身気まずいのだ。「そう?」と不二が言ったので、あたしは本気で覚悟を決めた。ごくり、生唾を思いっきり呑み込んで。
「あ、あ、あのね!?あ、あたしね!ふ、不二の事、好き……っ!」
「ありがとう、僕も好きだよ」
「……………………」
あ、れ?
…色々予想はしていた。けれど、はっきり言えばこの回答は予想外だ。しかも間髪いれずに言われてしまって、不二を見つめるといつものスマイルだ。……真意が、読めないんですが。
「え…?」
「やっぱりうちに入りなよ。風、結構冷たいしね」
ほら、そう言いながら不二があたしに手を差し伸べてくれる。え、?これは、嘘?何?え?
「え!ちょ、ちょ、ちょっと不二!?」
「うん?」
「こ、これって嘘!?ほんと!?嘘!??」
「何が?」
「ぼ、僕も好きってやつ!」
「……………はどっちなの?」
「……え、…………だ、だって、今日、エイプリル、フール、で、その」
「うん。…で、どっちなの?」
「……………ほんと、って、言っても良いの?」
「てゆうか、嘘って言われたら、傷つくんだけど」
「だ、だって!不二、理想高いって!いくら可愛い子でも性格の良い子でも、OKしないって!」
本人が、目の前の人物がそう自分で言ったのだ。この耳でしっかりと聞いたのだ。
そ、それなのに、理想が高い彼が平平凡凡な自分を選ぶハズが、
「うん、高いよ?」
「だ、だったら」
「だって、僕じゃないと嫌だもん」
「……!」
「…ね?理想、高いでしょう?」
ほら、もうこの話はおしまい。そういうかのように、不二はぐいっとあたしの腕を引っ張った。
「丁度良かった、今日姉さんシフォンケーキ作ってるんだ」言いながら、もうあたしは完璧おうちにお邪魔すること決定らしい。
「う、あ、でもあの、不二?あの、…ほ、ほんとに、ほんとなんでしょうか?あ、あとで嘘だよ、って言わない?」
「………は嘘にしてほしいの?」
「いや!そ、そうじゃ、なくって…だって、なんか夢、みたいで。エイプリル、フール、だ、し」
「それはが悪いんでしょう?わざわざこんな日に告白してくるんだもの」
「う!だ、だって!」
「……友達って言う関係を壊して全部なくなるのが怖かったのは、だけじゃないよ」
そう言って苦笑する不二の顔を見て、あ、これは嘘じゃないって、思った。あんなにいっぱい悩んだのに、なんだか拍子抜けしてしまう結果だったけど、でも…幸せだから良いよね。

言って良い嘘・悪い嘘 切原赤也

「赤也の遅刻癖は治りそう?」
「うーん…そのことで、昨日も言って聞かせたんですけどねー…『でもぉ、』とか『だってよぉ』だとか言い訳ばっかりなんですよ…」
「…困ったものだね、期待のエースが」
「てことで今日はエイプリルフールだって言うのも混ぜて、ひとつ赤也に嘘のメールを送ってきた次第であります」
「なんて送ったの?」
「えーっと、『今日と言う今日は遅刻なんて許さないから!早く来ないとピー先輩と浮気しちゃうんだからね?』って」
「…それは、またベタな」
「まあ信じるわけはないんですけどー…これでもし、早く来たらまあOKかな、と思いまして」

「…その前に、メールを見てるか謎なんですけどね?」
も大変な彼氏もったね?」
「いえ、そんな。大変っちゃ大変ですけど、なんかほっとけないですし。………んっしょ」
「あ、ごめん、高いから手が届かないね。俺がとるよ」
「わわ!良いですよー!これもマネージャーの仕事ですから!幸村部長は気にせずメニュー表作っちゃってください!……って、わわっ!」
「あ!!」
ドッシャン!
「す、すみません部長!し、下敷きにしてしまって!あ、あの!け、怪我ないですか?」
「ん、大丈夫…怪我はないかい?」
「は、はい。おかげさまで…あ、い、今、どけま」
ガチャ
「おい!!おっまえあんなわっかりやすい嘘メールしてくんじゃねーっつの!俺が騙されるとでも思ったか?今日は4月、つい、た…」
「…あ、赤也」
「……………………な、な………・」
「わーすごーい!ちゃんと遅刻しないで来れたね、えらいえらい」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!いつまでくっついてんだよ!!!」
「え?」
「お前!マジメールだったわけ!?え!?つかいつから部長と!?」
「ちょ、ちょっと赤也さん?何か勘違いしてませ」
「いつからも何も…これからだけど?も時間にルーズな男は嫌なんだってさ。って可愛いよね?あんまり彼氏気どりで余裕ぶってると横から俺がとっちゃうよ?」

(え!ちょ!?幸村部長!?)
(しー、良いから俺に合わせて)
「う、嘘っすよね?」
「さあ?……でも念のため、俺と二人っきりにしない方が良いんじゃない?…こういうこともあるわけだし?……二人っきりの部室って言うのは、意外に危険かもしれないよ?」
「………う、う、う、嘘だ、俺は信じなーーーーーーい!」
バッタン!
「…言ってるそばから二人っきりにさせてどうするんだろうね?」
「……………嘘、ですよね?」
「ん?……本当だよ?」
「……え!???」
「……くっ……ふふっ、ほんと君達二人は可愛い後輩だよ」
(…はあ、ほんと良い性格してるよなあ)
こうしてその日を境に遅刻が無くなった、とかだったら面白い

嘘?ほんと?嘘仁王雅治

「仁王くん」
「んあ?なんじゃ、
「…あたし、…妊娠、したかもしれない」
「………………」
「………………責任、とってよね」
「……うそ、じゃろ?」
「ええーーー!なんで?!」
「今日はエイプリルフールじゃき。…そんなベタな嘘に騙される俺じゃないぜよ」
「ぶーぶー!ちぇー!…さっき、仁王君一瞬考え込んでたからもしかしたらイケるかもって思ってたのにぃ!」
「……(そんなヘマはせん)」
「……あ、でも先月生理こなかったかも」
「…!??」
「あ、今慌てた?」
「…嘘じゃろ?」
「え?これはほんとだよ?」
「……………」
「……………」
「……まじ?」
「さあ?どっちでしょう?あ、もうすぐ休憩終わっちゃう!」
「いや、チョイ待ち!結局どっちじゃ!」
「んー?………・もしかしたら、さっきの嘘がほんとになるかもね?雅治パ・パ
「………!(マジか…!?いや、嘘か!?結局どっちじゃ!?)」

…結局騙されてると言う罠