2005.12.31
大晦日の夜は 鳳長太郎
「もう今年も終わるね」
先輩の声に俺は彼女を見つめた。そうすれば少し儚そうな顔。はあ、と白い息が口から出る。
「そうですね」
肯定をすれば先輩が顔を上げて俺を見た。それからにこっといつもの人懐こい笑みを浮かべる。
「今年も色々お世話になりました」
「お、俺こそ」
言って、お辞儀を一つ。俺も慌ててお辞儀を返す。それから同じくらいのときに顔を上げた。目が合って、笑いがこみあげる。こうしている間に今年ももう終わる。振り返れば凄く良い一年だったと思う。隣に、彼女がいるから。
「来年も、宜しくね、長太郎君」
ふわりと微笑む先輩に、俺はキスを一つ送る。
「勿論、俺のほうこそ宜しくお願いしますね」
そう囁きながら…。
2005年と2006年の間 仁王雅治
「2005年、12月31日…もう大晦日だ」
カレンダーを見とった彼女がぽつりと漏らした。携帯をいじっとったけどもすぐにやめて彼女を見上げる。
「?」
名前を呼べばが振り返って俺を見下ろす。それから俺の隣に座った。
「なんかあっという間に過ぎた気がする」
体育座りをしながら指で遊ぶ。俺は携帯をパチンと閉めるとテーブルに置いた。それからを見る。
「本当やの」
言いながらの肩を抱くと、は俺の肩に寄りかかった。瞳を閉じる彼女にそっと口付ける。
「…!仁王くんっ!」
した途端また大きな瞳が開いて顔を真っ赤にした。それが面白くてククっと笑みがこぼれた。
「何がおかしいのっ!!」
の抗議が聞こえるけども、スルー。
「まあまあ、今日は大晦日じゃしな」
「い、意味わかんないんですけどっ」
真っ赤にしたままの表情にまたキスをすると、途端抵抗をやめる。それでもぼそぼそと呟く声は止まない。でもそんなもんは今の俺にはどうでも良くて
「来年も宜しくな、」
言って、ぎゅ、と彼女の身体を抱きしめた。
雪、舞い降る夜 不二周助
雪が降る。ちらちらと。
「大晦日の日に雪、かぁ」
カーテンの間から覗く窓から外を見つめるに近づく。そうだね、と同意するとが顔をこちらに向ける。
「雪は好きだけど…でもこれじゃあいっぱい着込まないとお参り行けないね?」
残念そうにいいながらも、本心は嬉しいんだろうね。その瞳はキラキラと輝いていて、何度も外を見つめる。決して積もることはないけども、今年の冬は例年以上の大寒波。全国各地で大きな被害があるくらいらしい。その影響か、今年は早くから雪が降った。クリスマスには残念ながら降ることがなかったからか、大晦日に降る雪が嬉しいんだろう。
「嬉しそうだね」
言えば、は目をぱちくりさせた。それから少し笑みを浮かべてそう?と一言。その言葉でどれだけ嬉しいのか伝わってくる。
「今年も色々あったでしょ?その最後の日が大好きな雪だとなんか嬉しいなぁって。心に残りそうでしょ?」
えへへ、と照れ笑いを浮かべて。未だに窓の外を見つめる。雪は止むことなくちらちらと降り続ける。この分だと明日の朝にはうっすらと積もるのかもしれない。
「今年色々合った中で一番思い出に残ってるのは何?」
僕はの隣に立って問いかけるとは僕を見上げた。それから少し顔を真っ赤にして、少しむくれた顔をする。
「不二くん、意地悪。わかってるくせに」
ぼそぼそと落とすのはその一言。くすっと笑みが漏れて頭を撫でるとふい、とそっぽを向いてまた呟くようにこぼす。
「不二くんと付き合えたことに決まってるじゃんか」
その言葉が嬉しくて、僕は彼女を後ろから抱きしめるとの肩に顔を埋めた。
「来年も、よろしくね」
瞳を閉じて、君の事を想う。