指きりげんまん

真田弦一郎

「指きりげんまんってさあ…怖いよね」
「…突然何を言い出すのだ」
「いや、今女の子達が歌ってたから。無邪気に歌ってるけど、実際は怖いよ」
「何故だ?」
「だって、嘘ついたら針千本飲ませるんだよ?ヤバクない?…絶対口ン中入らないって」
「…そういう問題なのか?」
「そういう問題!じゃあ真田は飲める?」
「そもそも約束は守る」
「ほーへーふーん………青学1年に負けたくせに。あの時指きりげんまんしてたら今頃真田の胃ん中針だらけだよ」
「………(ピキ)ほー…そんなくだらんことを言うのはこの口か?ええ?」
「ほ、ほへんははーひ!(地雷だった!)」

仁王雅治

「ほんっきで!もういっつもいっつも遅刻してくるんだから!」
「悪かった、悪かった。じゃけ、機嫌直しんしゃい」
「…仁王は解って無い!あたしがどれだけこの日を楽しみにしてたかわかってる?」
「はー…わかっとるわかっとる。じゃけ、泣きやみ。な?次は絶対遅れん」
「…信用出来ない」
「………ホレ」
「……何その小指」
「指きり。これで絶対約束破らんよ」
「…………………」
「指きりげんまん、嘘ついたら」
「針、一千万本のーます!」
「(げ!)」
「指切った!」
「そ、それはちと多すぎやせんか?」
「…だって、約束破らないんでしょ?なら問題ないよね?次のデート、一千万本用意しとくから(にこ)」
「(墓穴掘ったかのう。…俺、生きて帰れるんじゃろうか)」

切原赤也

「俺、先輩が来てくれたらどんな試合にも勝ってみせますよ!だーかーら、試合来てくださいよーね?」
「…しょうがないなー。日曜だっけ?」
「そーそ!んじゃ、約束と言うことで、ハイ」
「?あ、指きり?」
「そ!先輩忘れん坊さんだからこれくらいしないとね!」
「そこまで酷くないのに。だって明日の話よ?」
「それでも!ね。ホラ」
「指きりげんまん嘘ついたら」
「俺の彼女になってもーらう!指切った!」
「えっ!ちょ、何それ!切原くん!?」
「ま、試合に勝っても付き合ってもらうッスけど!へへ、楽しみ〜♪」
「ちょ、私、OKしてないよ!?」
「何?先輩俺と付き合うのいやなの?」
「…う、そ、そうじゃないけど…」
「じゃあ良いじゃん!あ、でも嘘ついたら先輩と付き合えるけど、試合見てもらえないのはヤダなー」
「(……さっき試合に勝っても彼女にするって言ったくせに)」
「あ、じゃあ試合に遅れたら俺にちゅーするってどうッスか?」
「…!ちょ、ちょーしに乗らない!」
「イデ!」

柳蓮二

「あ、指きりげんまんしてる。可愛いね」
「本当にそう思うか?」
「え?…う、うん」
「…そもそも、指きりげんまんの由来だが本来『指きり』とは遊女が客に不変の愛を誓う証として小指を切断したことに始まり、やがて『指きり』と言う意味が約束を必ず守ると意味へ変化したわけだ」
「…え」
「げんまんの意味は『拳万』と言う漢字からして約束を破ったときは握りこぶしで1万回殴って制裁を与えると言う意味だ。指を切るだけには飽き足らず…ということで後から付け足されたそうだが」
「………」
「『はりせんぼん』はまあ言わずとも針を千本のませるという意味だ」
「………そ、だね」
「つまりは、これを訳せば、約束をする前にまず小指を切ってなおかつ約束を破った場合は1万回殴られ針を千本飲めと言うむごい歌なわけだ。それを知らないからと言って無邪気に言える子ども達はある意味一番怖いかもしれないな」
「…………」
「これでもまだ、指きりが可愛いと思えるか?」
「………………怖いです」
「だろう?」
「そんなこと淡々と言う柳が!もう!子どもの夢ぶち壊しだよう!」
「…真実を教えたまでだ。何故怒る」
「…もう知らない!」
「……突然怒るとは…変な奴だ。…新たにデータに加えておかねばな。…アイツの心を読み取るのは難問、だな。公式があれば良いのだが」
「(あんなこと言われたら指きりしよう!なんて言えないじゃない!もう!柳と小指繋いで見たかったのに!乙女心を知れ、データオタクっ)」