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夜空を見上げると、君に逢いたくなる。
だから、この気持ち(おもい)、貴方に届くと良いな。 
 
 
 
…どうやら、ウトウトしていたらしい。むくりと自分のベッドから起き上がり、ぼんやりとした頭で理解する。カーテンの隙間からのぞく景色は暗闇に包まれており、時刻は解らないものの、夕方やそこらでは無い事を理解した。携帯は…と考えて、は自分の右手にしっかりと握られていた携帯を見つけ、苦笑。そして、ピカピカと光るそれに、気持ちが高ぶる。もしかして…期待に胸がはずんで、そっとボタンを押した。着信者の名前が表示され、どくりと胸が高鳴った。―――不二周助。
の恋人である。なんで寝ちゃってたんだろう…!着信に気付かなかった事を悔やみながら、慌てて発信ボタンを押す。トゥルルと発信音がの耳元に流れ、数回それを繰り返した後繋がれる留守番電話サービス。
はあ…の口から思わず漏れるはため息。出る確率は限りなく低い事は気付いていた。着信があったのは二時間も前だ。しかも、不二は今遠征中。自由の身ではない。
 
逢いたいなあ。
 
無理だと思っていても、想わずにはいられない。シャッとカーテンを開けると、綺麗な夜空が目に飛び込んできた。雲ひとつない、空。大きな満月を縁取るように、ちりばめられた星々。それを見ていると、きゅっと切なくなって…そして、強く彼に逢いたくなる。
こんなに人を好きになる事等考えられなかった。瞳を閉じて思い浮かぶのは不二の事ばかり。
 
でも、駄目駄目。我慢我慢。…遠征、頑張ってるんだもんね。
は自分に言い聞かすように心の中で呟く。不二は遊びに行っているわけではないのだ。それならば、逢いたい等と我儘言ってはいけない。不二を困らせる事等、したくないのだから。
 
♪〜
 
思った瞬間、の掌で震える携帯。びくりと反応して、画面を確認すれば、先ほどまでの脳裏を占めていた人物からだ。理解するのと右手が動くのはほぼ同時。「も、もしもし!」の声が上ずった。『ああ、?』優しい、穏やかな声が耳元をくすぐる。それだけでは泣きたくなった。「しゅう、すけ」ぶわりと視界がゆらぐ。泣くな、莫迦。心の中で叱咤するものの、今にもの双眸からは涙が零れ落ちそうだった。
 
『何、、もしかして…泣いてる?』
「な、泣いてないよ!」
 
微かな変化にも気付いてくれた事が嬉しかったが、それが相手を困らせる事になると知って、とっさには嘘をついたが、拍子に涙がこぼれ出た。『本当に?』電話越しの声は訝しんでいる。きっとの嘘などばれているに違いなかったが、それでもは「泣いて、ないぃっ」とバレバレの嘘を紡いだ。自信の瞳から流れる涙をぐしぐしと乱暴に拭うと、受話器越しに不二が笑った。
 
、今僕外に居るんだ。は、今外に出てこれる?』
「えぇ…むしろ、今、出てる、よ」
『そうなの?フフ、じゃあ…そっちも晴れてるかなあ?凄く、夜空が綺麗だよ。星が、いつもよりも輝いてる』
 
不二の言葉に、先ほども見上げた夜空を見つめた。まるで以心伝心のように、不二が言うから、の涙が止まる。
 
、好きだよ』
「えっ」
に、逢いたいよ』
 
本当にまるでの心を読んだかのような台詞に、は驚きを隠せなかった。もしかして、周助ってエスパー?ためらいがちに言うと、もしかして同じ事想ってたの?と不二がくつくつ笑った。の胸にほっこりと暖かなものが注がれる。
 
、』
「な、に?」
『遠征はもうしばらく続くけど、僕の気持ちはと一緒だからね』
 
また泣きそうになって。はぐっと口を噛みしめる。でもこれは嬉し涙だ。「っうん…っ」ぐずりと鼻がなったけれど、は気にせず空を見あげる。
 
「周助、」
『ん?』
「好きだよ。逢いたいよ。触れたいよ」
『うん。僕も。帰ったら、一番にに逢いに行くから。待っててね』
 
彼に繋がっているであろう夜空から、私の想いが届きますように。
 
 
 
 
 
― Fin
 
 
 
 
 
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2012.02.24