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「周くんっ!」
不二が居たのは近くの公園だった。が不二の名前を呼んだことで、不二はゆっくりとベンチから立ち上がると駆け足での元にやってきて、の身体を優しく抱きしめる。その身体が冷えている事には気づいた。
「ごめんね、こんなに夜遅くに」
「ううん、良いよ。それより、ヤダ、周くん凄く冷えちゃってる!ごめんね、もしかして電話くれたときからずっと外で待っててくれたの?ごめんね、ごめんね?」
まるで自分のことのように今にも泣き出しそうになるの表情。
両手で不二の頬を優しく包み込むと不二は苦笑して、またふわりとの身体を抱きしめる。
「僕こそごめん。、湯冷めしちゃうね?」
せっかくお風呂に入ったのに。と紡がれて、どうしてお風呂に入ったのがわかったのだろうと目をパチクリさせると不二が、シャンプーの香りがするとの髪に顔をうずめた。
「な、なんか周くんえっちだ」
「なんで?」
急激には自身の顔が赤くなるのに気づいた。誤魔化すように不二の胸に顔を摺り寄せると不二は嬉しそうに微笑んでから、とりあえずベンチ座らない?と促す。ベンチの方に視線を向けると小さなビニール袋があることに気づいた。?と顔を上げると「、勉強頑張ったしご褒美」と優しい笑みとかち合った。ベンチに腰掛けると、不二は先ほど買ったばかりの肉まんとカフェオレをに差し出した。はそれを笑顔で受け取ると、まだ暖かさの残る肉まんにカプリと噛り付いた。ちょうど勉強した後で小腹が空いていたのだろう。そんな恋人に満足して、不二は自分も紅茶を飲み始めた。
「でも、本当にごめんね、こんな時間に」
「ん。…確かに11時以降は深夜徘徊であたしたち捕まっちゃうね?」
「ごめん」
「あはっ、さっきから周くん謝ってばっかり」
「の謝り癖が移ったんだよ」
「でも謝らないで?あたしも、あ、いたかったし」
頬を染めながらなのはきっと照れもあるのだろう。誤魔化すようにカフェオレをコクリと一口。
今日は十二月二十四日。クリスマスイブだ。まさか恋人同士の一大イベントであるイブに勉強する羽目になったのはとて不本意だったのだ。
「あたしこそ、もうちょっと勉強に余裕があったら、今日会えたのに。ごめんね?」
たった一日、されど一日。その一日が命取りになると友達や先生に脅されて、今日予定していた遊びはキャンセルとなったのだ。の通う学校は都立の小さな中学校だった。そして、が受験するのは今不二が通っていて、これから通う事になるであろう青春学園高等部。それなりに学力が必要とされる場所を第一志望にしてしまったからにとっては今の時間が非常に苦痛であった。それでも、頑張って受験勉強しているのは、今隣に居てくれる恋人がいるからだ。同じ高校を受験すると言うのがの最大の目標だったのだ。それを応援してくれたのは他でない不二。クリスマス遊べそうにもないと消沈気味のに笑顔で「頑張って」と応援したのは不二だった。
「も謝らないで。結局会っちゃったし。これなら僕の家で勉強すれば良かったね?」
「うっ…周くん家で勉強なんて緊張してムリだよ。それに、バカなのが露呈されて嫌」
「でも、対策とかそれなりに教えてあげられると思うけど?」
余程成績が著しくなかったのだろう。苦虫を噛んだような表情をしたに不二は苦笑を一つこぼすとぐっとの肩を抱きよせた。
「辛いと思うけど、頑張ってね。此処が正念場だから」
「……うん」
「絶対なら受かる。…が同じ学校通えるの、楽しみにしてるから」
それからの額の髪をサイドに分けてちゅっと小さな口付けを一つ。
「う、凄くプレッシャーなのですが」
ぼやいた声に不二は可笑しさを抑えきれないようにクスクスと笑うと、ポケットからあるものを取り出した。それをに手渡すと、はポカン、と不二を見つめる。「クリスマスプレゼント」とつけ加えられて、ようやくそれの意味がわかり、喜びに顔を綻ばせたが、一瞬にしての顔から笑顔が消えた。
「ご、め!あたし、家だ…」
わざわざ不二はこれを渡しに来てくれたんだろうとようやく彼の意図する行動がわかったと同時にダメダメな自分に嫌気がさして素直にプレゼントを喜べないで居る。すると、不二はクスリと笑った。
「来てくれただけで十分」
「だ、ダメだよ!せっかく周くん来てくれたのに」
「。そんな顔しないで?プレゼント、嬉しくない?」
「そんなわけないよ!ただ、申し訳なくて」
「だったら、笑って?」
プレゼントは後日でいいよ。とどこまでも優しい不二に自分の不出来さに泣きそうになりながら、言われた笑顔をようやく表情に浮かべると、不二も釣られて笑った。うん、最高のプレゼント。
「えっ」
「メリークリスマス、」
その一言を合図に紅茶の匂いがの鼻腔をかすめ、暖かなキスが振ってきた。
甘い甘い林檎味のキスに、は答えるように自身の腕を不二の首に回した。
― Fin
あとがき>>リョーマ書き終えて、これで不二書かなきゃまた不二そこまで好きじゃない疑惑を持ちかけられるので頑張って書きました(笑)二時間弱と言うあたしとしてはまずまず早い時間なので多分凄くグダグダ。……だけど、僕、今凄く眠いんだ……。見直しできそうにありません(笑)
グレイ不二を書こうかと思ったんですがクリスマスだし、甘い方が良いよなーと白不二に。めりーめりーくりすまーっす!
サンタさんへ今年こそ、しゅうすけをください(笑)
2008/12/24