あなたが私に 触れるから 「、じゃあまた明日。」 「うん。あ、待って。」 「ん?」 もうちょっとでいいから一緒にいたくて、周ちゃんの腕を掴んでしまった。 恥ずかしくて下を向けば、周ちゃんの大きな手が頭に触れた。 ほんの数秒だけで。 その数秒が、時が止まっているかのように感じる。 ほんの数秒だけで。 その数秒だけで、頭が熱い。 ほんの数秒だけで。 その数秒が、ずっと続けば良いと思う。 「クスッ。じゃあもうちょっと話そうか。」 「うん、ありがとう。」 私の初めての彼氏。 全てが初めてで、どう甘えて良いか、何を話して良いのか、わからなくなる。 クラスメイトというだけの関係が、どうして付き合うようになったのか定かではない。 好きで好きで、溢れてしまう感情をぶつけたら、それを受け入れてくれただけの話。 自分勝手な感情を、周ちゃんは笑って受け入れてくれたの。 なんで?どうして?こんな私でいいの? そんな気持ちだけが渦巻いて、周ちゃんの優しさに甘えてる。 ――――頭、洗いたくないなー。 セミロングの髪の毛を、愛しそうに撫でる。 髪の毛を梳かしておけばよかったとか、もっと綺麗に洗っておけばよかったとか思うの。 それは周ちゃんが私に触れたから。 周ちゃんが私に触れるのなら、良い香りのシャンプーとリンスにする。 ストパーも、高いものをかけるよ。 だからもっと触れて欲しいと思うのは、欲張りでしょうか。 「フフ、今日は待っててくれてありがとう。」 「ううん。テニス、見てて楽しいから。」 「俺を見ててくれたの?」 「うん。か、か、か・・・」 「か?」 「カカカカ、カッコよかったよ。」 「クスクス」 右手を口元に手を当てて、左手はお腹を押さえて笑っている。 控えめに笑いつつ、周ちゃんは一向に笑い終わる気配がない。
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