準備期間終了への
カウントダウン
「、どっか行きたいとこあるか?どこにでも連れてったるで」
「なに、どうしたの急に?」
「いいから言ってみ」
突然の侑士の言葉に"?"マークを頭に浮かべつつ、ゆっくり考えてみた。
「・・・・・・駅で待ち合わせて夢の国ネズミーランドへレッツ・ゴー。
絶叫系アトラクション乗ってお昼食べてパレード見てグッズ買ってお土産買って、
でも最後まで残らず夕方頃帰宅、・・・・・・うーんと帰ってくる途中でなにか映画を観る、の方がいいかな。
そのあと一緒にご飯食べて、それで、」
まだあるんかい、とでも言いたげな眼差しでこちらを見ている侑士(だって自分から言ってきたんじゃん)に笑顔を向けて、
「お泊りとかできたら、最高の1日デートだね」
(――――――うわ、自分で言ってて恥ずかし!!)
己の頬の熱さを自覚しつつ、『・・・・・・なんて、冗談だよ』と続けようとした。
まさにその時。
「最後のとこ、採用や」
大真面目な顔でそう言われ、一瞬なにを言われたのか分からなかった。
「・・・・・・え、は、なんですと?」
「もうすぐ俺ら、付き合い始めて1周年になるやんか?」
「わ、いきなり話飛びましたね!」
「違うで、ずっとこの話してたんや」
「言われなきゃ気付かんわ!!」
――――――って、漫才やってる場合じゃない!
「せやからなんかお祝いとかしたいなぁ思てたんやけど、自分で考え始めたらキリがないねん。
これ本人に希望を聞いた方が早いわー思て」
「侑士・・・・・!え、でもちょっと待った、私の希望って最後以外は無視?」
「・・・・・・県外にでも行ってみるか?」
(ああやっぱりネズミーランドと映画は無視なのね!)
これをいつもとなんら変わらない『、この映画一緒に観に行かん?』って誘うトーンで言ってるあたり侑士はかなりの大物だ。
「ほ、本気?」
「・・・・・・あんなぁ、俺、相当大真面目にに言ってるつもりなんやけど」
「だ、だって、」
「なぁ」
慌てる私とは対象に落ち着いてる侑士は笑みさえ浮かべて、私の髪に触れた。
ゆっくり撫でられていとしさがこみ上げてきて、その衝動のまま侑士の首に腕を回す。
ぎゅう、としがみつけば侑士が私の耳元で笑ってる声が聞こえた。
「俺1年お預けくらったんやで?」
「だってそういう雰囲気になることなかったし」
「せやから、そろそろ大人の階段上りませんか」
語尾が標準語になってることは気にも留めず、ゆっくりと侑士から離れると私は微笑んだ。
嫌と言うわけがない、言う理由がない。
むしろ私は、喜んで受け入れる。
「部活は大丈夫なの?」
「ちゃんと跡部には許可もらってるで!」
誉めて誉めて!と言わんばかりの笑顔で言うものだから私は吹き出してしまって。
「よく許したなぁ、跡部が。あとでお礼言っとこ、っと」
(ほら、私がこう言えば少し拗ねた顔になる貴方に)
(いとしさが溢れて、止まらない)
1周年記念夢!(Paradox/春幸)
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