君とドルチェ
「ちゃん!おはよう」
「…あ、おはようございま、す」
東先輩と初めて会った時から、数日が経った。あれから、何度か東先輩と話す機会が増えた。一日何回も顔を合わせてる、と思う。そのたびに東先輩はあたしを見つけると話しかけてくれる。わざわざ一後輩にこんな接してくれるのはありがたいなーと思ったりはするんだけど、なかなか打ち解けられないのは、初コンタクトの時の可愛い発言が気になってるから、だと思う。
今日も二三言会話を交わすと、東先輩は(いつの間にか当たり前になってるようだ)あたしの頭をくしゃりと撫でるとじゃあね、と東先輩の友達と共に去って行った。
「ちょ、ちょっとちょっと!!」
東先輩が去ってしまった後、突然あたしの腕を掴んだのは依子ちゃんだった。興奮してるらしく、ちょっとだけ掴まれた腕が痛いと思ったけど、そんなあたしの様子に気づくことなく依子ちゃんはせきを切って話し始める。
「ちゃんってば、なんで東先輩と仲良くなってんの!?」
す、ごい。目がランランとしている。…って、なんだか別の事を考えてしまったけども、すぐに依子ちゃんの質問を頭の中で思い返す。なんで仲良くなってるのか。…そんなの、あたしが聞きたい。なんで自分自身仲良くなってるのか、謎なのだ。そもそもアレは仲良くなってるって言えるのかな?とか思う。だって、あたしの方はまだまだ緊張が抜けないし、何を喋ったらいいのかわかんない。もともと男の子より女の子と話す方だから、比べる対象って言ったら、寿ちゃんくらいなんだけど。
…寿ちゃんと比べると、東先輩とはどうもよそよそしい。
「仲、良くないよ」
考えたら、そういう結論に達するわけで。でもあたしの返答に納得できないのか依子ちゃんはブーブー文句をたれていたけれど、軽く苦笑することしか出来なかった。
今日の部活も終わり、片付けもひと段落ついて着替えをしていると、「あ、優奈先輩!どうしたんですか??」って声が聞こえて、振り返る。そこには夏の間までお世話になった先輩マネージャーの優奈先輩が立っていて…。優奈先輩はにこやかに笑うと、あたしの前までやってきて、「ちょっと良い?」って振ってきた。帰りは寿ちゃんと帰ることになってるんだけど…。顔に出てたのか、優奈先輩は「佐藤君にはもう言ってあるから」とまるであたしの気持ちを先回りしたみたいに、言った。寿ちゃんが知ってるなら、ってコクリと頷くと、やっぱり優奈先輩は大人びた笑顔で、「じゃあちょっと来てもらえる?」とあたしへ促した。
数歩先を歩く先輩の足が止まった先は、裏庭。
とうか・のえる
あとがき>>動き出しました(あたしの脳内では)
20102.21