MOI et TOI

愛と恋の副作用




「はい、皆さん注目してくださーい!」

委員長であるの声で、ざわついてた声がやんだ。(六年になっても変わらず委員長になってた)てきぱきと喋るはさすが委員長って感じ(似合ってる)みんな教卓の前に立つに視線をやると、はこほんと一つ咳払いをして、「皆さんしおりは行き届きましたか?」ってのソプラノの声が教室中に響いた。あたしは先ほど前の子から回されたしおりに目をやる。その表紙にはでかでかと【修学旅行のしおり】と書かれていた。そう、もうじき、最高学年特別の、修学旅行がやってくる。(と言っても、あと一ヶ月も先だけど)修学旅行は、しおりにも書いてあるけど、六月の終わりごろだ。こんなに早い時期からって思うかもしれないけど、最後の大きな思い出作り、色々作戦とか計画とか立てるためにこうして早めはやめの行動らしい(先生談経由)まあ確かに、それに毎日時間取れるわけじゃないからちょうどいいのかもしれない。





の話を聞いて、結局班はどうする?的な話で好きなグループが良いですってノリになった。って言うのも、四年生や五年生のときにいった合宿と修学旅行は違う。自由行動で、遊園地に行ったりするらしいのだ。結構な割合で班の子と行動することが多いらしい。去年とかも自由行動はあったし、班行動が基本だったけど、結構ルーズだったと思う。だから多数決の結果、班は好きな子とってなった。もちろん、のけ者が無いように平衡に。それが守れないなら勝手にあみだだ!とは男らしく(って言ったら失礼かな)言い放ったので、皆まじめにはーいって返事をしてた。(まあうちのクラスは仲良しクラスだからのけ者になることはないと思う)

「じゃあ班を作ってください」

の合図で、皆いっせいに席を立つ。あたしはその波にちょっとずれるように、教卓の前に向かって歩く。は副委員長(寿ちゃんだ)が黒板に書いてる字と共に何か喋ってる(多分、さっきの発言を寿ちゃんに伝えてるんだ)スラスラスラ〜っと黒板に寿ちゃんの丁寧な字が並ぶ。「!」って名前を呼ぶと、が振り返ってふわって笑った。きっとはあたしが何を言いたいのかお見通しだ。

「「一緒な班になろ?」」

そして、見事重なった声。息ぴったりじゃんって笑っていったら、言うと思ったからって返された。やっぱりお見通しだった。それだけ仲良くなれた証拠だよね。って思うと嬉しくて(ちょっとこそばゆいけど)にって笑ってたら、黒板に文字を写し終えた寿ちゃんが手をパンパンと払いながら、こっちを見た。「あ、二人一緒なんだね」って言う寿ちゃんにコクンと頷いて「寿ちゃんも一緒な班にならない?」って気軽に誘ってみた。なんせ、男女六人ペアだからだ(1チームだけ五人だけど)そしたら「そうだね。うんそうしようか」って寿ちゃんもあっさり頷いてくれたので、あと男子二人女子一人ってなるわけだ。どうしようかって話をしようと思ったら、「寿!」って寿ちゃんが呼ばれた。寿ちゃんに釣られてそっちを振り向けば加護嶋君が大きく手を振ってる。

「お前チーム決まった!?」
「あ、うん。今さんと一緒に班になろうかって話をしてるんだけど」
「マジで?丁度いいじゃん、じゃあ俺と箕谷木も混ぜてくんね?」

言いながら加護嶋君が隣にいた箕谷木君と自分(加護嶋君)を交互に指差しながら、快活に笑った。「どうする?」そんな声が振ってきて、寿ちゃんを見上げると、答えを求められていて…、え、あたしが決めるの?ってちょっと困惑。だって別に断る理由なんて、ない。そりゃあ去年、合宿でちょっとだけ加護嶋君の言葉に傷ついたけど、でもあれは別に加護嶋君に悪気があっていったわけじゃないってわかってるし、何より寿ちゃんがその言葉にあたしが傷ついてるなんて知らないはず。だから、「あたしは別に良いよ。は?」ってを見れば、も別に異存は無いみたいだった。

「良いってさ!」

寿ちゃんが加護嶋君たちに向かってOKの返事を出すと、おー!って言いながらこっちにやってきた。「委員長に副委員長がうちの班にいるってすげーな」って箕谷木君が言ったので、本当だよねって同意する(よくよく考えればそうだ)加護嶋君も、じゃあリーダーとサブリーダー決まったな!って笑った。それに対して寿ちゃんは苦笑しては迷惑かけないでね。って言ったので、ちょっと笑ってしまった。

「で、うちのチーム後一人どうするよ?」

そう言ったのは箕谷木君で。リーダーに任命されたが「そうねえ」とちょっと考えこむ仕草をしたあと、「でも別に人数的に五人チームが一つは必要だから、このまま余らなければ五人で良いんじゃない?」って、答えを導き出す。さ、さすがだよ…リーダー!

「さすがちゃん頼りになるよ!」
「あらあら、佐藤君よりも?」
「え、…うーん…同じくらい!」

考えてちらっと寿ちゃんを見たらばっちり目が合ったので、正直に答えたら寿ちゃんがその答えを聞いてあはって笑った。それから続いて「それでも頼りにされてるんだ」って言うからそりゃあもう!って返したら、「ほら、いきなよ」って声が聞こえたような気がして(あまりにも小さい声、だったけど)ん?って声の聞こえた方を振り向いたら、早紀ちゃんが友達二人に押されてるところを発見してしまった。バチって目が合って、早紀ちゃんが顔を赤くして「あ、あのっ」

「あ、えっと…もう、メンバー決まっちゃった?」
「とりあえず五人のところが他に無ければ決定かなって」

早紀ちゃんの問いにいち早く反応したのは加護嶋君で、早紀ちゃんがその答えにそ、そうなんだ…って呟くのが聞こえた。それからぎゅって早紀ちゃんがこぶしを握り締めたのにあたしは気づいた(教卓に隠れて見づらかったけど)

「あ、あの!よかったら、なんだけど…私も入れてもらっちゃ、ダメ、かなあ?」

声とは裏腹に、控えめな台詞にあたしはもちろん皆が一瞬沈黙。そしたら、が一番初めにその沈黙を破った。台詞に乗って出てくる名前は、早紀ちゃんがよくつるんでる子の名前。その子達と一緒じゃなくって良いの?と早紀ちゃんに言うと、早紀ちゃんはしどもどしながら、

「そのつもりだったんだ、けど、二人とも違う班に入って、」

私だけあぶれちゃったから。ってちらちら二人を気にしながら話す早紀ちゃん。そっちに意識を集中させれば、確かに早紀ちゃんたちは四人でいつも一緒にいたもんなあってことに気づいた。

「それなら良いんじゃね。じゃあ柏木もうちの班な!」

そう言ったのは、加護嶋君で。おどおどしてる早紀ちゃんの背中をぽんって叩きながら笑って言った。それは皆に意見を聞くって言うよりももう決定事項って言うような言い回しだった。でもだからって皆いやな顔せず、皆が皆早紀ちゃんを歓迎してる。

でも、あたしだけ何故か無邪気に喜べなかった。嫌だなっとは思わなかったけど、なんでかな。すっごく不安でたまらなかったんだ。そんな風に思う自分が、嫌だった。





  





2009/01/09