MOI et TOI

愛と恋の副作用




それから修学旅行の班は、きちんといい具合に振り分けられて、決定事項だと先生に提出した。また後日どこに行くか何をするかを決めることになって、チャイムがなって帰りのホームルームを終えたうちのクラス。あたしはカバンを持つと寿ちゃんのところに行って、じゃあ野球場行こうっていつもの台詞。



あたしの予想通り、寿ちゃんは小学校六年になったとき、横浜リトルのキャプテンになった。実力だ。才能もあると思うけれど、でもその才能の影で寿ちゃんが凄く頑張ってるのをあたしは知ってる。だから、才能って一言で片付けちゃいけないんだと思う。キャプテンって場所は、寿ちゃんの日々の努力のたまもの(だっけ)って言うものだと思う。
監督に任命されたときの寿ちゃんは本当に嬉しそうで、まるであたしも自分のことのように喜んでしまったのをつい昨日のように思い出す(っていっても実際この間の出来事なんだけど)その話を帰りの道なりで話してると、この間からずっとその話ばっかりだねはって笑われてしまった。だって、すっごくすっごく嬉しいんだ!

「もう、だって寿ちゃん嬉しくないのっ?」
「嬉しいけど…なんかの方が嬉しそうだよね」
「んもう!寿ちゃんはクールすぎるんだよお!」

ブンブンってコブシを振るったら、寿ちゃんが「そんなことないけど」ってあくまで否定するからあたしは「そんなことあるんですっ」って反対に強く肯定しておいた。そのあと寿ちゃんは笑うだけだったから多分この話はあたしの勝ちだ。…多分寿ちゃん呆れたのかもしれないけど。





そして今日もあたしはベンチに座ってみんなの練習風景を眺めてる。この光景見るのももう三年目かぁ…。そういえば新規の子も結構さまになってきてる。まだ、一ヶ月くらいなのに。それほど野球好きな子が多いんだなぁって関心してしまった。寿ちゃんを探せば、ちょっと遠くの方で、一人の男の子(多分新入部員)とキャッチボールをしてる。(肩慣らしかな?)二人の光景を見ていると、まるで自分達の小さいころを思い出した。ああやってあたしも寿ちゃんとキャッチボールしてたなぁ(あの子みたいに上手じゃなかったけど)へらって笑ってみてたら、ポーンってちょっと離れたところでやってた子が、キャッチしきれなかったボールが飛んできた。白いボールがあたしの目の前でバウンドして、テンテンテン、と最後にはころころ転がってきて、あたしはベンチから立ち上がってそれを手に持った。「すいませーん!」って声が聞こえてきて(この子も、新しい子だ)

「いっくよー!」

思いっきり男の子のミットに向かって投げた。力いっぱい投げたボールはいい具合に男の子の方に向かって飛んでいく(よかった、変なところじゃなくって)我ながら、いいピッチングだ。わわ!って言いながら男の子が片手を伸ばして―――パシッって、「ナイスキャッチ!」って褒めたら男の子がへへって笑った。うちには妹しかいないけど、弟いたらこんな感じなのかなって思った。

もナイスピッチング!」

そんな声が反対からかかって見てみると、寿ちゃんが褒めてくれた。



★★★



「「「お疲れっしたー!」」」

男の子達の声がグラウンドに響いて、さあ帰る時間。ベンチに座って待ってると寿ちゃんがちょっと汗をかきながら「帰ろうか」って言うので、あたしはうんって頷きながらタオルとドリンクを手渡した。ありがとう。って寿ちゃんがお礼を言ってタオルを首にかける。「あ、寿先輩お疲れ様です」声が聞こえて、寿ちゃんの後ろを見ると男の子が立っている。そこでああ、今日寿ちゃんと肩慣らししてた子だって気づいた。

「うん、大河もお疲れ様」

にこって寿ちゃんが笑ったのがわかる。たいが、と呼ばれた男の子に視線を移すと、男の子の方もあたしを見てるのがわかった。こ、これは挨拶した方がいいなって思って「お疲れ様!」って言って笑ったら、えっとって顔された。あ、自己紹介忘れた。あたしと男の子のやり取りを見ていた寿ちゃんがぷって笑うのがわかって、あたしが自己紹介する前に、寿ちゃんが「僕の幼馴染なんだ」って紹介してくれた。男の子はようやくそれでこんなところで見てたんだって納得した様子で

です、よろしくね。たいが、くん?」
「何で疑問系なんスか」
「あ、いやちょっと自信なかったから」
「…ふう…。清水大河です」

帽子のキャップを脱いで、ぺこんって軽いお辞儀をされたので、あたしもぺこんってお辞儀を返す。そしたら大河君(ダメって言われてないから呼ぶことにする)が「さん野球はしないんですか?」って質問してきたのであたしは苦笑して

「出来ることは出来るんだけど、へたっぴなの。それに見るもの好きだし」
「へえ…うちの姉貴へたっぴだけどやってますよ」
「え、お姉さんも野球やってるの?」
「え…ああ、まあ…それで野球始めたみたいなもんなんで」

寿先輩たちと同い年ですよ。なんて言うのでわーなんかちょっと感激だなーなんて同じ女の子として嬉しくなる。三船リトルに入ってると言う情報も聞いてしまった。そのときに寿ちゃんが「ああ、あの子か」って言うからきょとんと首を傾げたら。ほら、四年生のときに、対戦したときにいた女の子だよ。黒髪の。って教えてもらった。あ、あの子!負けん気の強そうな女の子だ。あの子、女の子なのにかっこよかったなぁってあのときの試合のことを思い出す。なるほど、あの子が大河君のお姉ちゃんってわけだ。世間て狭い。

そんな話を軽くして、じゃあ俺こっちなんでと大河君とは別れた。横浜リトルは今年も強くなりそうな予感です!





  





2009/01/09

大河君登場の巻。好きなんです、生意気少年。苗字呼びにしようか下の名前にしようかどうしようか迷ったけど苗字呼びで。てゆうか(アニメオリジなのかな?)大河が入った時期っていうのは妄想です。いつごろかって出てました?(汗)早めに出しとかなくっちゃ修学旅行後はいかんからね!