MOI et TOI

愛と恋の副作用




修学旅行の行き先は、お決まりの『京都・大阪』だった。まあ定番って言えば定番だ。

「金閣寺!」
「やだよ!絶対銀閣寺の方がいいって!」

………言い争いは、耐えない。





がやがやとうるさい今の時間は二回目の修学旅行の打ち合わせ時間。どこ行く?的な話を地図を見ながら話してたら、加護嶋君が「そりゃあ金閣寺は行きたいよなー」って言ったのが発端。金閣寺行くなら銀閣寺もだろ!って箕谷木君がそれに続いた。じゃあどっちも行くかって最初は言ってたんだけど、が地図とにらめっこして「それはムリ」ってきっぱりと言い放った。突然の却下に二人の「なんで!?」がハモって(ほんと息ぴったりだったのだ)あたしもなんで?って思ったからを見ると、「自由時間的に、無理。距離が遠いもん」って地図を指差しながらわかりやすく説明してくれた。確かに、結構離れてる。「効率が悪いから、どっちか一つに絞って、周辺で遊んだ方が楽しい」って簡潔に言った言葉をきっかけに、じゃあどっちをとる?!みたいな流れ。で、ずっとこの言い争いだ。

「金の方が良いって!銀なんて二番じゃん」
「ばっか!お前!金だからなんだっていうんだよ!やだやだ、金が一番とか思っちゃってる奴って」

どうすれば良いんだろう。あたし的にははっきり言えばどっちでも良い。多分みんな思ってるはずなんだけど。だからどっちの味方につくわけにも行かなくて。でもそろそろ本格的な喧嘩になりそうで、おろおろしてたら寿ちゃんが「ほっときなよ」ってほんと、どうでもよさそう。え、でも…って困った風に言ったら、「それより僕らは僕らで行きたいところ探しとこうよ」ってほんと我関せず。大物だよ、寿ちゃん…。と早紀ちゃんの方も見たら、二人とも地図やパンフレットを見て「あ、ここ良いね」なんて喋ってるから、あたしも仲間に入れてもらうことにした。パンフを見ると、『清水寺』って書いてあって、説明の部分を見ると、『恋愛成就、縁結び』なんて書いてある。そこで、ピンって来た。早紀ちゃんが良いって言ったわけ!でもまで良いって言うとは思わなくって、「もしかして恋してるの?」って言ったら、違うよ。と言われて、

「私が見たいのは此処。音羽の滝!清水寺のところにあるらしいし。まあ清水寺にもいきたいけど」
「人気スポットなの?」
「……… 、授業で習ったよ」
「え゛っ」
「まったく…」

ほらここって次のページを開いたら、綺麗な滝の写真。わ、確かに綺麗。あたしもみたいかも…なんて小さく呟くと、でしょ?ってが笑う。こくこく頷いて、行きたいねえって早紀ちゃん達と話を進める。

「何の話?」

パンフを三人で見てたら、寿ちゃんも中に入ってきた。早紀ちゃんの顔が朱色に変わる。こ、これ。っていいながら寿ちゃんにパンフを渡す。それで寿ちゃんがそれに目を通して「へえ、清水寺かあ」っていった後「良いね、じゃあ此処も観光に入れよう」ってアッサリと言った。

「てことで。そこの二人、いつまでも喧嘩してないで、行く場所が決まったよ」
「ええ!!」
「清水寺決定になったから、まあじゃあ時間があったら金閣寺ってことで」
「な!金閣寺!?」
「やりぃ!」

なんで金閣寺なんだよ佐藤!って箕谷木君が寿ちゃんの肩をぐらぐら揺らす、その横で「やっぱ金閣寺の方が人気なんだよ!」とかいってはしゃいでる加護嶋君。箕谷木君はそれが癇に障ったみたいで、ベシって加護嶋君の頭をはたいたあと、また寿ちゃんに詰め寄って。でも寿ちゃんは地図を見ながら

「別に皆そこまで金閣寺にも銀閣寺にも興味は無いよ。ただ、多数決で清水が良いってなったから、どっちかと言ったら金閣寺が近いってだけで。でも行った先でどうなるかわからないしね。あくまで清水が優先」

あっさりと言ってしまうから、おいおい良いのかよ、ってが思わずツッコミを入れた。時々、寿ちゃんってすごいドライなんだよね。変に感心してしまう。男の子二人はと言えばまじかよぉ…ってうな垂れてて、…い、良いのかな…と二人を黙ってみてたら寿ちゃんが「良いんだよ」ってまるであたしの心の中を読んだみたいに言うからびっくりしてしまった。



★★★



結局あれから時間が過ぎて、放課後になった。寿ちゃんと一緒に下校してる最中。考えるのは、修学旅行の自由時間のことだ。やっぱり何か箕谷木君や加護嶋君に悪い気がして…寿ちゃんにその話を持ちかけた。

「話し合いの時にも言ったけど僕はこれで良いと思うよ。だからが気にすること無い」
「でも…二人とも行きたがってたのに」
「むしろだからこそ僕は清水寺って言う選択肢が出来てよかったって思ったけど」

どうゆうこと?寿ちゃんの言ってる意味がいまいち…てゆうか全然わからなくって、難しいって顔をしたら寿ちゃんがふふって笑って「つまりね」って喋りだした。

「あそこでもし清水寺って案が出なかったら必然的に金閣寺か銀閣寺かになっちゃうだろ?」
「うん」
「で、多数決になった場合、もし3・3で別れちゃったら余計にこじれて話が進まない。かといって、どっちかに決まってしまったりしたら、少数派になったほうが不満になっちゃうでしょ。だから、これで丁度いいんだよ」

特に加護嶋と箕谷木は喧嘩っ早いから。仲が良いけど喧嘩すると大変なことになるしね。出来れば修学旅行前や最中にそんなゴタゴタ持ち込みたくないし。って寿ちゃんが続けた。なるほど、そんな深いわけがあったんだと、あの短期間のうちにそこまで考えてた寿ちゃんを軽く尊敬してしまった。確かに清水って決定したとき、「ちぇーしょうがねえか」ってなって、ちょっと納得いってなかったっぽかったけど、喧嘩にはならなかった。今寿ちゃんの言ったとおりの結果になってることに気づいた。

「さ、さすが寿ちゃん!」
「まあ清水の話がなくって喧嘩になったとしても委員長がどうにかしてくれただろうけどね」

喧嘩両成敗とか言って、二人とも殴っちゃうとか。って寿ちゃんが意地悪く笑った。確かにあり得そうだねってあたしも笑った。

そんなこんなな修学旅行前の話し合い。なんだかんだで楽しくなりそうな予感。





  





2009/01/09

…清水寺に近い方って、金閣寺でOKだ、よね?確か中学のときにそういう話をしたような記憶が…(定かじゃない)違ってたら笑ってやってください(汗)
あと、どうでも良い疑問点。『チョー○○!』とかっていつ流行りましたっけ?時間軸をとりあえずあわせたいんだけど、まだチョーは早いかな。あたしが中学のときだったっけ。…流行ったといえばメジャー(中学三年)でも出てくるたまごっち(ポケモンはメジャーでは流行ってないんだろうか)は小学校四年生あたりのときだったと思うんですけど(笑)