愛と恋の副作用
時は過ぎ、明日は修学旅行当日です!あたしは自分の部屋で今最終確認をしていた。二泊三日の修学旅行。五年生のときも二泊三日だったけど、今回とはまたちょっと違う。ドキドキする気持ちは一緒だけど、なんていうんだろう。
大きなボストンバックの中身を全部出して、一個一個また入れていく。歯ブラシなどの身の回りに必要なものは全部入れた。お菓子も入れた。カメラいっぱい写真撮るからって思ったから三つも入れた。あとあれとこれと…って順番に入れていったらやっぱりパンパン。ふあー…結構大荷物になっちゃうなぁ。って考えて、あ、そういえば小さなリュックも必要だよね。って気づいて、確かクローゼットの奥の方に入れ込んであったリュックを取り出した。うん、これでいっか。そっちのほうにカメラとかそういうの入れとこう。そしたらちょっとはスッキリしたみたい。それを忘れないようにボストンバックの横においておく。
うん、準備完了。それからベッド近くにおいてある目覚ましのセット。これで今日はちょっと早めに寝ればオッケイだと思う。ふう、ってひと段落ついたとき、かちゃりと部屋のドアが開いて、ママがひょっこり顔を出した。「準備、ばっちり?」って聞かれて、うん。って頷く。そしたらママがコードレスを持って、「寿君から電話」って。受話器を受け取って、保留ボタンを解除して、電話を耳に当てて「もしもし?」って言ったら、「遅くにごめんね」って言われて、ううんって否定しておいた。
『明日のことだけど』
「うん」
『集合時間が結構早いでしょ。朝早いの苦手だからもしかして親に送ってもらう?』
僕は歩いて行く予定なんだけど。って言葉が続いて、あ。そう言えば送ってあげるわよって言われてたことを思い出した。そのことを伝えると、あ、じゃあ明日は別々がいいね。って言うから、このまま電話切っちゃダメだ!って思って「あっ!ちょっと待ってて!!」ってまた保留ボタンを押して待ってもらうことにした。それから階段をタッタッタって下りて、リビングにいたママに、「明日寿ちゃん歩いていくんだって」って言ったら、「あら、寿君のおうちまで迎えにいってあげるわよ」って快くオッケーしてもらった。
「あ、もしもし寿ちゃん?あのね、明日一緒に行こうよ。ママが寿ちゃん家まで迎えに行ってあげるって」
『え、でもそんなの悪いよ』
「全然全然!だから明日も一緒にいこ?朝早いし最近変な人多いってせんせー言ってたじゃん」
『え、でも』
『僕のうちに寄ってくれるって事は、それだけ分早く起きなくちゃダメなんだよ?』そんなの朝弱いのに無理でしょう。って言われて、あ、そういうことだ!って気づいた。あたしの家から寿ちゃんのおうちはすっごく遠いってわけじゃないけど、ちょっとだけ距離がある。いっつもジョギングしてから…って言う理由から寿ちゃんとの登校はほとんど一緒じゃないけど、日直とかそういうときは結構一緒に登校したりしてる。『運動がてら走って行ったら大丈夫だよ』くつくつ笑いながらの声が耳に間接的に届いたけど、でもなんかそれも…って渋ってたら、
『うーん…じゃあ、お言葉に甘えようかな』
「ほんと!?」
『うん、でも朝弱いのに悪いしおばさんにも申し訳ないから僕がの家まで行くよ。それくらいの運動はさせて』
朝ちょっとでも身体動かしてあっためないと、気が落ち着かないから。って言ったけど、多分半分は気を遣ってくれたんだろうなって思った。それでも、ここまで来た寿ちゃんの意見をひっくり返すことなんて出来ない(意外にガンコだ)ママにそう言ったらじゃあ寿君の優しさに甘えようかしら。って言ったから、あたしはわかったって返事を返す。それでも、やっぱりしぶしぶだったんだけど。
『じゃあ、明日ね』
おやすみってお互いに寝る前の挨拶をして、電話を切った。まあ、でもなんだかんだで一緒に行くことになったし、良いか。電話をコトンって元の場所に戻す。「じゃあ明日は寿君に迷惑かけないようにちゃんと起きなきゃね」ってママが茶化すように言ったから、大丈夫だもん。って返しておいた。だって、ちゃんと目覚ましセットしたもん。
「おねーちゃん修学旅行かー。良いなー」
そんな妹の声が聞こえてきて、顔を向けるとソファーの背に両手をついてこっち見てる妹の姿。へへって笑ったら、「お土産絶対買ってきてね!」って言われた。(ちなみに夕食のときにも言われた)もうそれ耳だこだよーって妹に言ったら「だっておねえちゃん忘れそうなんだもん」ってあり得そうなことを言われてしまったから、苦笑いしか出てこなかった。
…忘れないように、メモしとこう。声には出さずに心の中で誓って。
「さ、じゃあそろそろ寝ようかなー」
「写真もいっぱい撮ってきてね!あと、寿也君にもお土産よろしくって言っといてね!」
「ええー!なんで寿ちゃんにまで」
「え、だってお土産多い方が嬉しいじゃん!ちらって言ってくれればきっと寿也君優しいから買ってきてくれるだろうし!」
「じゃあ自分で頼んでよー」
「だってわたしも朝弱いもん」
しれっと妹は言ってしまうから、だったら今の電話のときに頼めばよかったじゃんって思った。だいたいあたしがそんなこと寿ちゃんにいえるわけない。だってあんまりにも厚かましくない?!言ったら、「おねえちゃんでも厚かましいとか思うんだね」ってさりげなく失礼なことを言われた。
なんかラチがあかないなぁ…こんなときは
「もうっ!とにかく明日早いからもう寝るね!」
逃げるが勝ちだ。ああ!って妹の声がしたけどあたしは急いでリビングのドアを閉めて二階に駆け上がった。それ以上妹が追っかけてくることはなかったから、まああきらめたのかもしれない。ふう、って部屋に入ってからため息をついて、夕食のときからお土産で買ってきてほしいものをずっと言ってたから忘れないようにそれをメモると、リュックの中に入れ込んだ。時計を見たら、まだ八時過ぎだったけど、明日は四時半起きなので、もう寝ちゃおうって思った。電気を消してベッドにもぐりこむ。
まだまだ眠気はやってこなくって、目をつぶったら明日の旅行のことがいっぱい頭に浮かんできて、余計眠れそうになかった。
2009/01/10