愛と恋の副作用
次の日、目覚ましのジリリリリリリリリ…って音でちゃんと起きれたあたしは忘れないように部屋からカバン二つを提げて下に下りると、ああ今起こしに行こうと思ってたのよ。とママが朝ごはんを机に並べながら言った。余りにも早すぎる朝ごはんのせいかいつもみたいにそんな食べられなかったら、後でおなかが空くからってお昼のお弁当とは別に(お昼は各々が持ってくるらしい)サンドイッチも持たしてくれた。
寿ちゃんが来たのは、六時。(集合は六時半。出発は七時だ)「おはよ」ってあたしとは違って目がぱっちりの様子の寿ちゃんにまだ眠いせいか「おはよお」って言ったら、やっぱり寿ちゃんに笑われてしまった。
集合場所の学校に着くと、もう結構人がいてその中にの姿が見えて、車から降りたあたしは寿ちゃんと一緒にのところに行った。どうやらあと来てないのは箕谷木君だけらしい。それ以外のメンバーは揃ってて、みんな早いなーなんて思った。そしたら、リーダーのが、そう言えばバスの席順だけどって説明しだす。去年あたしバス酔いしたんだっけ。と思ってたら、念のためは前の方が良いかもねって寿ちゃんが言った。六人だから3組に分かれることになる。そしたら寿ちゃんがの隣に座るよって言うから、どれだけ心配性なんだろうってちょっとおかしかった。うん。そうあたしも言おうとして―――ぐい。袖を引っ張られて、え?って振り向けば、違う班の女の子がさんちょっと良い?って。
「え、あ、うん。なあに?」
「あ、ごめんちょっと来てもらって良いかな」
「え、うん、わかった。ちょっと行ってくるね」
くい、ってあっちの方向を指差されてあたしは彼女に着いて行くことにした。って言ってもそんな離れた場所じゃない。そこにはもう一人クラスメートがいて、?と小首を傾げると、腕を引っ張ってたクラスメートがさん、お願いがあるんだけど、ってかしこまった様子。え、何?二人を交互に見て、二人もお互いを一回だけみて(アイコンタクト、だ)
「今回の修学旅行、出来るだけ佐藤君といないで欲しいの」
「え」
「ほら、さん早紀が佐藤君のこと好きなの知ってるよね。だから協力してあげてほしいんだよね。うちらとしては」
「あの子本気なんだよ。さん別に佐藤君のこと幼馴染にしか思ってないんだよね。だったら、ちょっとは協力して欲しい」
かわるがわるに言われる言葉が上手く理解できなくて、返事につまってしまう。そしたら「去年、肝試し結局佐藤君と回れなかったじゃない」って痛いとこ、つかれた。
もちろん、それがさんの所為だって言ってるわけじゃないし、あれはあれで仕方なかったと思ってる。早紀もそう言って笑ってた。でもだからこそ今回こそは早紀に楽しい思いさせたいの。再度、告白したいって言ってた。それくらい本気なんだよ。でも、いつも佐藤君の隣にはさんがいて、正直、近づきにくいんだよね。だから。
スラスラと紡がれる言葉が、真剣なんだってすごく伝わる。そりゃああたしも早紀ちゃんの恋、応援したいと思う。でも、幼馴染が隣にいちゃそんなにいけないことなのかな。ちらりと二人を見たら、もう一人が「わかって、くれる?」ってちょっとだけ消極的に言うから、まさか嫌だなんて言えなかった。
「わかった」
本当はあたしだって寿ちゃんと回りたかったけど、でもただの幼馴染でしょ?って言われたら恋愛してる早紀ちゃんに悪い気がして。あたしが頷いたら二人がにこって笑って「ありがとう!」なんて言うから、あたしは更に嫌だなんていえる分けない。あたしも同じように笑ったけど、上手く笑えたのかな。
遅かったね。皆のところに戻ったら、もう箕谷木君も到着したみたいだった。「はよー」ってちょっと面倒臭そうな声での挨拶に苦笑して、おはよって返す。それから、で、席の件だけどってさっき喋ってた話をが持ちかけた。寿ちゃんと目が合って、「僕はと座るよ。万が一のこともあるしね」その一言にズキってちょっとだけ胸が痛くなる。寿ちゃんの言葉に「まあそうだね」って頷いたのはだ。去年のことを思い出したみたいでちょっとだけ顔が固くなる。なんだか、決定しそうな勢いで。
「あ、あたし!とが良い!」
否定したのは、誰でもなくあたし本人。え、って寿ちゃんとがあたしの方を見て、ちょっとだけ驚いた顔。それからあたしはもっともらしい理由を考えて(嘘は得意じゃないけど)
「もうあたし六年生だよ?寿ちゃんにばっかり迷惑かけらんないよ!酔いやすいって言ったら確か早紀ちゃんもだよね。それなら寿ちゃん早紀ちゃんについてあげて。あたしだったら大丈夫だから!今日はちゃんとママから何かあった場合の薬ももらってきてるし、はなんていっても委員長で頼りになるもん」
あ、もちろん寿ちゃんが頼りないって言ってるんじゃないよ!って否定も忘れない。皆に喋る隙を与えないままに加護嶋君と箕谷木君を見て「箕谷木君と加護嶋君は二人の方が話し盛り上がれていいよね」ってむしろ却下なんかさせてやるかって言う風に言ったら、まー、って肯定(と受け取る)が返ってきたから、最後に早紀ちゃんとを見て、「…ダメ、かな?やっぱり早紀ちゃん女の子同士がいい?」って聞く。
「え、大丈夫、だけど」
「私もが良いなら良いけど。酔った場合のことを考えると」
「もう!そうそう酔わないよー酔ったとしても薬もあるし、委員長さまを責めたりしないから!それに、あたしに話したいこといっぱいあるんだ」
じっと見られて、でも本当に話したいことって嘘じゃないもん。にこって笑ったら、は仕方ないって一回大きなため息をついて、わかった。って頭を縦に振った。それから、「えーじゃあ異論はないっすかねー」ってが指揮をしたら、皆こくりと頷いた(反応はさまざまだったけど)そしたらちょうど先生が「じゃあ順番に乗ってくださーい!」って言ったのが聞こえた。バスに向かう途中に、寿ちゃんの袖をくいって引っ張って、「気を遣ってくれたのにごめんね」ってもっかい謝ったら寿ちゃんがやわらかく笑って、くしゃってあたしの頭を撫でた。
「僕より委員長って言われたときはまあショックだったけど」
「うっ」
「でもの言い分もわかるし。委員長に話したいことって、多分僕じゃダメなことなんだろ?だったら、仕方ないよ。でも無理だけはしないでね。まあ委員長が隣だったら大丈夫だろうけど」
くすって笑って、そっと頭から手が離れた。それから寿ちゃんは早紀ちゃんの隣に。「いこっか」ってバスのほうを指差して早紀ちゃんと行ってしまった。…ちょっとだけ、なんか複雑な心境。黙ってみてたら、ぽん、って肩を叩かれてそこには委員長がいて、「なんとなく、わかったけど…良いの?」なんていわれるから、反対にあたしのほうがすぐに意味がわからなかった。でもそれは寿ちゃんと早紀ちゃんのことを指してるんだって気づいて、こくりと頷く。
「…バスで、話聞いてあげるよ」
ぽん、ってもっかい肩を叩かれて、あたしたちもバスに乗り込んだ。
2009/01/11