MOI et TOI

愛と恋の副作用




あれからバスに乗り込んで、バスは走り出した。もちろんあたしはと隣でおしゃべりを堪能した。みんな朝早かったから寝ちゃう子も多くって、そのときにこっそりと、朝のあの話をにした。そしたら、「ほんとうにはそれでいいの?」って真剣な声と顔。でも、だって良いのも何も仕方ない。なんだかんだ言ったってあたしと寿ちゃんは幼馴染だし、早紀ちゃんは寿ちゃんのこと好きなんだし。あたしがお邪魔虫になっちゃ、迷惑だ。だから本音を隠して「うん」って笑った。そのとき、が何か言いたそうな顔してた、けどあたしはあえて気づかないふりを決め込んだ。うん、だって、良いんだ。確かに修学旅行で寿ちゃんと一緒にいられないのは残念だけど、でもこれが最後ってわけじゃないだろうし。うん。だから、平気だ。どうってことないもん。

あれから、なんやかんやでバスは宿泊先に着いた。今日は大阪に一泊するらしい。お部屋は六人部屋で、男女に別れる(当たり前だけど)から、別の班と合同だ。お部屋は洋室で、え、なんかすっごい贅沢なんですけど!って感じのお部屋。まあその分こっちが修学旅行代出してるんだけどね。ってがあっけらかんと言うから苦笑してしまった。確かに、そうなんだけど。
荷物を定位置において、必要なものをリュックに入れたら、がさ、ロビーに行くよ!ってやっぱりリーダーを務めてた。みんなはーいって返事して、最後にリーダーのがきちんとお部屋に鍵を閉めたのを確認して、エレベーターを使って降りた。これから、待ちに待った自由行動!





また暫くバスに揺られて、向かう先はあの有名なAパーク。今営業してる数多くの日本の遊園地の中で一番古いとバスガイドさんが説明してくれた。お化け屋敷がめちゃくちゃ怖いって有名だよね。ってが教えてくれた。お弁当は別のところで食べたし、もうそろそろ着く予定らしい。四時間ほどの自由時間があるそうだ。晴れて良かったよね!って言ったら、確か去年の修学旅行は雨で、遊園地いけなかったんだってってから聞かされた。それはすっごくショックだっただろうなぁ…。

バスから降りて先生達の説明を受けて、じゃあ迷子になるなよ!って自由行動の開始。うちも班の子で集まって、じゃあ最初どこ行く?ってノリになって、ちょうど近くにあった乗り物を見つけた加護嶋君がまずはジェットコースターからだろう!って話になった。あ、良いねぇって好反応なのは箕谷木君だ。「佐藤も良いよな」って寿ちゃんの肩に腕を回して、箕谷木君が言う。

「いや、でも苦手な人もいるんじゃない?」

寿ちゃんがちらっとこっちも見て言った。もちろんあたしがジェットコースターを好きなのは知っている。ということはと早紀ちゃんに対しての気遣いだと思う。そしたらはあんまり得意じゃないけどいけないことはないって寿ちゃんの返事に返すと、みんなの視線が早紀ちゃんにいく。

「あ、ご、めん…私絶叫系は、苦手かも」

でも、私見てるからみんな行ってきて!ってにこって早紀ちゃんが笑った。そしたら寿ちゃんがそれじゃあ柏木さんが退屈だよ。って間髪入れずに話し出す。「ああ、じゃあ私が柏木さんと待ってるよ」挙手したのはだった。え、みんながを見る。寿ちゃんはえ、でも…って顔をしたけど「さっきも言ったけど私も得意な方じゃないから」って静止。くるりとが早紀ちゃんの方を向いて「柏木さんがいやじゃなければだけど」って早紀ちゃんの返事を待つ。ブンブンと早紀ちゃんが頭を振った。

「嫌なんて!あ、ありがとう」

早紀ちゃんがにこって笑う。あ、でも…あたしは出発前の話を思い出した。早紀ちゃんの友達のセリフ。これ、は…寿ちゃんを残した方が良いんじゃないか。でもそう思ってる間に寿ちゃんが「じゃあ四人で行ってくるけど…」って。え。寿ちゃんを見上げると、じゃあ行こ。って促されて。早紀ちゃんとを見ると行ってらっしゃいって手を振って。
良いのかな。悩んでる間に寿ちゃんがほらってまた呼ばれて、あたしは早紀ちゃんのことを気にしながらも歩きだした。「な、んか悪いなぁ…」ぽつりとつぶやいた言葉は周りの音にかき消された。結構人がいるみたいで、加護嶋君と箕谷木君はもうずいぶん前を行ってる。寿ちゃんもほんのちょっと前を歩いてたけど気を抜いたらはぐれちゃいそう。一般人の人ととかもいて、ドン!ってぶつかった。「あ、ごめんなさいっ」謝ったら、寿ちゃんにまた名前を呼ばれて。

「え」

目の前には、寿ちゃんの手。手と寿ちゃんの顔を交互に見ると、寿ちゃんが「またぶつかっちゃうだろ」ってにって笑う。う、ん。「はぐれないように。」それに手を乗せて、ぎゅっと寿ちゃんの手を握った。あったかい寿ちゃんの手。ふわって無意識に笑顔になれる。行こって今度は隣から声が聞こえて、うんってあたしは頷いた。



★★★



「お前らおっそい!」
「てか、子どもかよぉ」

待ちくたびれた!って感じの声がかかって、それから箕谷木君があたしと寿ちゃんの手を指さして笑った。え、って手に視線を移すと、寿ちゃんがあたしと手をつないでる方の手を顔あたりまで上げて、「はぐれちゃダメだからね」って笑った。「過保護だな」呆れたような加護嶋君の声。う、って言葉に詰まると、「気にすることないよ」って。さらにぎゅって手をつながれて。

「うんっ、仲良しなんだもんねっ」

にこって笑い返した。このとき、早紀ちゃんの気持ちも早紀ちゃんの友達の気持ちも、思い出さなかったわけじゃないけど、でも…あんまりにも寿ちゃんの手があったかかったのと、言われた言葉がうれしかったから。だから、ほんのちょっとだけ、忘れたふりをした。ごめんね、早紀ちゃん。心の中でだけ早紀ちゃんに謝って。その言葉が早紀ちゃんに届くことはないんだけど。





  





2009/01/11

『Aパーク』はでたらめランドです。USJにしたかったけど、この年代にUSJはなかったんだ…!それ以外に知ってる遊園地がなかったんだ…!ひらかたパークにしようかと思ったけど乗り物が良くわかんなかったので、ボツに。↑でガイドさんが言ってることはひらかたパークのことですが、別物と考えてくださいませ。お化け屋敷が有名とか知らんし(笑)